大好きな女の子がいて、その子と仲良くなりたいがために追っかけまわして、まずはその子のお友達に接触してそこからいろいろと…なんてわりと古風なやり口かもしれない。そんな不器用な智也にかまううちに、あおいにはきっとその古くさい不器用さが小さな魅力に感じられてきたんだと思う。あおいもまた、ZC-1000なんてゆうカメラとレトロな8ミリフィルムを愛する人間だったのも、たんなる偶然なんかじゃない。
「君は恋してないとダメだね」物語の中盤であおいは智也にそう言う。映画に誘われたときから、智也はあおいのことをどう思っていたのだろう。好きだけど、なんだろう。誰にも言えない恋だとか、そんなんじゃない。たんなる男女の友情ではおさまりきらない。それでも恋なんかじゃない。
あおいは、ずっと智也のことが好きだった。でも恋人になると崩れてしまういまの距離感がとても心地良くて、このままの関係でいたい、そう思ってた。わかるなあ、そうゆうの。いまのお湯はいつかぬるま湯になって、それに浸かってると風邪を引くなんて自分では理解してるのに、居心地のいい場所は動きたくないんだよね。
まっすぐに伸びた虹をみた日に、智也はなにを思ったのか。好きだった女の子をあきらめたカフェからの帰り道、あおいといっしょにみたまっすぐな虹。あおいのことを思い出した、では済まなかったはず。留守電にメッセージ残したのも、彼女の存在が自分のなかで本当は想像以上に大きかったこと、そしてそれがさらに大きくなってきたことを自覚したんだと思う。よく言われていることだけど、大切な人の存在ってゆうのは、近くにいるとぼやけててよく見えない。遠くにいってしまったあと、その人を強くイメージしたときに、ぼやけてた輪郭がとてつもない速さではっきりとかたちをとりはじめて、そのイメージがいままでとは比べものにならないくらい大きくなる。少しずつ少しずつ大きくなって、それが爆発したのが、あおいの死のあと、あおいが智也に向けた小さなラブレターを読んだときと、一万円札でつくった指輪を見つけたとき。
かなが最後につぶやいた、「バカだなあ。お姉ちゃんも、岸田さんも」ってゆう台詞、あれを聞くと、取り戻せない思いに悔やむことはしたくないなって思う。ありのままでいい、変に奇を衒う必要もない。変わることを怖がらないで、一歩だけでもいいから前へと足を進めることが、大事な気持ちを大事な人に届けるために、いちばん等身大な行動なんだなって。
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自己紹介

- レオ
- 好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。
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