【感想】サムシング・ブルー / 飛鳥井千砂

2013/03/22

感想

t f B! P L
青、好きです。

それだけの理由で手にとった。きっと僕は本能的に青に惹かれるものがあるんだと思う。買い物カゴの中身が青系統の色ばっかって、よくある。

さて本題。

石田智久、町田沙希、由比謙治。ひとの名前がフルネームで出てくる。おそらく大事な意味をもつ登場人物なんだろうなとはここでわかる。いっぽう、中谷くん、マキちゃん、美幸ちゃん、という名前が出てくる。彼らは脇役なのかな? と、いったん疑問をはさんで、野島和人、田原法子、渡部昇、阿部芳信、澤田繭子、といった名前が続々と出てくる。フルネームと愛称をとりまぜた登場人物の名前。たぶん理由はふたつある。

まずは、単純に焦点の当てかた。このはなしは、浅川梨香と高校時代に同級生だったひとたちが中心になって進んでいく。主役と、脇役。呼びかたもそれぞれちがうし、はなしを整理するためにも、主役はフルネームで統一したんだと思う。

もうひとつ、浅川梨香の視点。石田智久も澤田繭子も、フルネームで出てくるひとは浅川梨香の恋人だったり、同級生だったり、いわゆるタメの関係。いっぽうで、マキちゃんは年齢設定は年上だし、中谷くんも美幸ちゃんも会社の後輩。だから浅川梨香の上下にいるひとは、浅川梨香の語る地の文ではそういう口調になってる。正彦や里美ちゃんは家族なだけに特殊だけど。

最初は、野島和人に対する浅川梨香の文句や愚痴を読みながら、「勘ぐりすぎじゃないの?」と思った。そこまで深い意味をこめて日常会話をしてたら疲れそうな気分になる。でも、渡部昇に対して正反対の感情をもつ浅川梨香をみながら、野島和人と渡部昇のあいだでメリハリがつくのがわかる。もしも野島和人の描写だけだったら、ただ浅川梨香が気むずかしい性格の女性で終わるわけだけど、渡部昇との描写を入れることで、浅川梨香の気持ちの揺れがみてとれる。同時に、こんなことを考える女性もいるのか~と考えさせられる。

サムシングブルーはただの結婚式に由来しただけじゃなくって、ちゃんと大切な思い出に起因してるのですね。構成も、最初にわかりやすく8人の関係を説明しておいて、中盤でそれをくわしくひもといてる。それが最終章につながる。

序盤に野島和人や渡部昇の一挙一動にさまざまなリアクションを内面におこしてた浅川梨香だけど、そういうシーンはだんだんと減って、終盤ではそういう他社への感情よりも、それをとおして自分はどうだったか、という自問自答が多かった。タペストリーをめぐる一連のはなしで、すこしずつ変わってく浅川梨香の心情が読みとれておもしろい。

石田智久に関しては、すこし伏線がわかりやすい面もあるものの、随所に「結婚式の招待状の前日に石田智久と別れた」というはなしがほどよく出てきたし、最後にはマキちゃんと中谷くんのこともあったので、あそこで石田智久と浅川梨香がリンクしないわけにはいかなかったはず。

浅川梨香が渡部昇と寝たことも、高校時代に由比謙治とギリギリまでいっちゃったことも、ねちっこいセックスシーンもなくさわやかに読めて、あとに残るのはそれを通じて浅川梨香がどう感じるかだった。あくまで役割としてのセックス。それはなんだか読んでて気持ちいい。

けっきょく、由比謙治と町田沙希は回想や手紙を除くとラストシーンにしか出てこなくって、一度もしゃべらないままだった。それはよかった。もしも浅川梨香と町田沙希が面と向かって会って話しをするシーンは、余韻を残すにはすこしいきすぎてる。読後の気持ちいい後味をあじわうためには、あのエンディングがベストだと思う。すべてがつながって、動きだす、その瞬間を切りとって終わらせた感じ。

タイトルどおり、どことなく透明感のある、それでいて生々しい感情もまた表れている小説。こういうのを読むと、里美ちゃんじゃないけど、高校時代もっとたのしめることはあったんじゃないかって、思うよね。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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