【感想】ココロ・ファインダ / 相沢沙呼

2013/03/19

感想

t f B! P L
高校の写真部に所属している4人の女の子を通して、そしてカメラのファインダーを通して、不安とか葛藤とか、悩みとか憤りとかをとらえてる。

登場人物の名前やキャラ設定がとてもよくできていて、なんでもないような描写があとになって大事な意味を帯びることがけっこうあった。伏線と言うよりは設定のうまさ。それがカメラの知識や構造なんかとリンクしてる。カメラのはなしをとおして、みずみずしい女子高生たちのそれぞれの内面がすこしずつ晴れやかになっていくようす。『ココロ・ファインダ』というタイトルは、文字通り心のなかをファインダーで覗くという意味といっしょに、「心がfine(快晴)だ」というダブルミーニングもあるんじゃないかと想像をふくらませることもできる。

ところどころ、地の文と会話文の境界線があいまいになっている箇所があって、そのナチュラルさには舌を巻いた。声に出したり、ハッキリと心に思ったりしているわけでもなく、かといって、地の文で説明として機能しているわけでもない、いい意味で中途半端な登場人物の声。直前の会話文のカギカッコの続きであるようにも思えるし、あくまでひとりごとのようにプロットを進めていく文ともとれる。上手だなぁ。

各章にそれぞれ主人公をひとりずつフォーカスしていて、でも4人が関わりあっての物語構成。カメラという媒体は、みたままの人間と、なにかに写る人間との対比を上手に表現するテーマになってる。あっちの世界とこっちの世界。どっちがほんとうとかないし、どっちが大切とかもない。ただあるのは、どっちもほんとうでどっちも大切なんだよ、っていうちょっとした逆説的な真実。「写真」っていうのは「真実を写す」って書くよね。鏡のなかの右手は鏡像の左手じゃない。それはきみの右手なんだよ。

個人的に好きなキャラはシズ。天野しずく。いつも冷静で、なにかを達観したようにアドバイスをくれて、部員のだれよりも写真を愛していて、自分の葛藤だってそっくり抱えている。謎解きというほど大きなものでもないけど、物語にでてくるミステリアスな出来事をするどくとらえるのが彼女の役割。「どんな物体にも、それぞれ特有の色があって、それらは常に光を放っているんだ。より正確に言えば、物体は、光を受け止めて、反射する。散乱といって、あらゆる方向に光が放たれていく。物に色がついて見えるのは、この散乱のときに、表面の分子によって特定の波長以外の光が吸収されてしまうからなんだ。わたしたちの眼は、その反射した光を受け止める。わたしたちは物を見ているんじゃなくて、光を見ているんだよ」

著者の相沢さんはカメラが好きなんだなぁと思わせる。シズも、カオリもミラ子も秋穂も、おのおのの悩みがあって、カメラをかまえてる。トイカメラとか、銀塩カメラとか、一眼レフとか、みんなバラバラだけどカメラはカメラだ。レンズをとおして見える景色は、カオリみたいにかわいい女の子かもしれないし、学校の陽のあたらない壁かもしれない。そういうのぜんぶ意味があって、解釈の余地があって、だれかの感情を動かすことができる。

おなじ瞬間は二度とない。
だから、どんなときだって、わたしたちは全力でシャッターを切るのだろう。
時間はかかるかもしれない。
失敗するときもあるかもしれない。
けれど、そんな中で、輝かしいほどの美しい瞬間を切り抜くことができれば——。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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