同棲とは 3

2013/05/13

t f B! P L
(前回の続き)

むかし付きあってた彼女が家出少女として泊まりにきてから3週間とすこしが経った。

「ねーねーテレビー。テレビみたいー。ヒルナンデスやってる時間だよー」

「おまえいつもそんな昼間の番組みてるくらいヒマなの…?」
「だってフリーターだもん。いまは職探し中だけどさ。ミヤネ屋もみてた。芸能界事情にもくわしくなっちゃった」
「ひとのこと言えないけどね、俺も」

当時、僕の部屋にはテレビがなかった。おまけにワケあり中だった。だから彼女のことを言うには自分を棚に上げないといけない。立場はいっしょなわけだ。

「ところでさー、れおくんれおくん。最近パソコンでアダルトサイト開いた?」

「(!)いや、開いてないけど、どうして?」

実際のところ開いてなかったし、べつにパソコンでアダルトサイトを開くことを隠す必要があるくらいウブな関係でもなかったので、正直に言った。


「あのね、れおくん、いくらなんでもブックマークフォルダに『おさかな図鑑』ってのがあったらだれでも気になるよ」

「なっ、はっ! 見たの!? 俺のパソコンのブックマークを!?」

ぶっちゃけると僕はいかがわしいサイトのブックマークのフォルダを「おさかな図鑑」という名前にしている。だって「AV」とか「マル秘」とかじゃわかりやすいし、かといってほかに思いつかなかったのでそうした。


「いやーれおくんの趣味がよくわかった♡ ああいう企画ものが好きなんだなーとか、こういう顔が好みなんだなーとか。うんうん愉快な時間だったよ。削除しといた

「NOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」

アダルトサイトのブックマークフォルダを削除される気持ちは男性のみなさんならおわかりになると思う。女性のみなさんには、うん、親のしわざで本棚から漫画が根こそぎ消えてたときみたいな感情だと思っていただきたい。ようするにコツコツと蓄積してあったお気に入りが全焼した。いやまぁアダルトサイトなんだからそんなカッコつけて言ってもむなしいだけなんだけど。

そんなこんなでにぎやかにやってたんだわ。うん、つらいこともあったけど(ブックマークとかブックマークとか)。でもある日、彼女がこう言った。

「実を言うとねー、れおがここに住んでるのは知ってたの。で、利用しちゃおうと思ったわけ。きっと断られないだろうと思って」

「実を言わなくてもわかってるからいいよ。夕食はおいしいから、それでチャラだ。win-win」
「あ、うれしー♡ でもね、わたしもそろそろ帰ろうと思うのだよ」
「それがいいよ、たぶん」
「でね、実家に帰ることにはするんだけど、今後また遊びにきてもいいかなーって」
「泊まりじゃなければぜんぜんいいよ。たまには手料理食べたいし」
「中学のときもよくつくってたよねー。れお、好き嫌い多いからたいへんで」
「いまもそんなに変わってないでしょ?」
「ん。野菜とれよ、ちゃんと」

まぁそれくらいが妥当だろうと思った。これ以上も長居されると半同棲みたいになる。いやまぁこれまでもじゅうぶんに同棲だったんだけども。

「じゃ、またくるねー」

「おう。ご両親と仲良くな」
「ん。ま、近いんだし、どっかでも会うよね、きっと」
「すくなくとも、もうしばらくのあいだはね」
「大学うまくいくといいねー」
「がんばるよ」


***


“もうしばらく”経っても、僕は引っ越しをせずにまだここに住んでいる。で、2013年が明けたころに、彼女はやってきた。こんどは10万円を請求したり、トランクケースを引きずってはいなかった。そのかわり「聞いてよー、母さんったらひどいんだってば」とか「わたしの同級生が結婚してさー、親もあせりだすわけよ」とかいう家族の愚痴話をかならず連れてくる。僕は紅茶を淹れて、愚痴をひととおり聞き終えるまであいづちをうつ係だ。でも彼女はウチにくると毎回のように晩ごはんをつくってくれる。で、いっしょに食べる。なんかやってることは変わらない気もする。

こういういきさつで、音信不通だったむかしの彼女と再会して、いまにいたるまでなかなか仲良くやってるわけ。恋愛とかそういうんじゃなくて、もっとべつのなにか。世のなかおもしろいこともあるんだなぁと思う。

と、まぁ、日記を読み返してたらなつかしくなったので、その日記をもとにこうやって長きにわたりブログに書いてみた。会話なんかはけっこう忠実だと思う。生きてれば漫画みたいなことも起こりうるんだって、なんだか思いますのであった。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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