GLAY 2

2013/05/17

essays

t f B! P L
14歳のとき、実家の物置にあったCDラックから見つけた、1枚の青いCD。当時まだCDを1枚も持っておらず、音楽なんて聴かない少年だった僕が、なんでまたCDラックなんて見ていたのかは、あんまり覚えてない。なにかを探してたのかもしれないし、音楽を聴いてみたくなったのかもしれない。そのCDを手に取ったのには、たいした理由もなかった。青いケースのCDなんてめずらしい、ただそれだけのこと。

でも、それを聴いてみようと思ったのには、きちんとした感情があった。スケルトンのCDケースから覗く、ジャケットのひとりの男性の顔写真。ソフトフォーカスながらも鋭いまなざしでこちらをにらむその人は、理性では語りきれないメッセージを、感受性豊かな思春期の僕になんとなくたたきつけたみたい。このCDには、なにやらとてつもないパワーがあるんじゃないか。音楽の「お」の字も知らなかった僕にもそう思わせる魅力を、彼の瞳は持っていた。思えばそれ以来、ずっと彼のバンドの虜で。僕の音楽歴は、彼らとともに始まった。

なにしろ音楽を聴くなんてことが初めてだったので、家のCDラジカセにディスクを入れるだけで心臓が高鳴り、ドキドキして、期待と緊張が入り混じった特別な感覚を味わった。「変な音楽だったらどうしよう」そういう不安もあったかもしれない。結論から言うと、その不安はおかしなくらいの杞憂に終わった。

再生された1曲目のイントロを聴いて、心が一瞬だけ宙に浮いた気がした。僕がイントロを聴いただけでそんな気分になったのは、いまのところこのときが最初で最後。それは初めて自発的に聴き入る「音楽」が、僕に招待状を送ってきてくれた瞬間だったのかもしれないし、自分の知らない世界の扉を開けたときに入ってくる風みたいなものだったのかもしれない。なんでそんな抽象的な書き方をするかっていうと、とにかく非現実的だったから。でも、あの一瞬ふわっとした感覚は、いまもまだ覚えている。あれから何年も経つのに、いまもまだ。

楽器の技術なんてなにもわからない、歌の上手い下手もろくに感じとれなかったド素人の僕に、たしかに感情的に訴えてきた。とにかくそれが、僕とGLAYの出逢いだった。

実家にあったGLAYのCDは、それだけだった。聞くと、父がむかしパチンコの景品でとってきたものらしい。いま思えばそのCDは500万枚を売り上げた「REVIEW」なんだから、パチンコの景品にあってもなんらおかしくはないのだけど、ウチにあったそのいきさつには少しばかり苦笑したっけな。

それから僕は中古屋をめぐり、GLAYのCDを少しずつ買い集め、自他ともに認めるGLAYオタクとなった。最初のころは、CDを聴ければ満足だったのだけど、だんだん欲が出てきて、「もっと彼らの姿を見たい」「GLAYにまつわるエピソードを知りたい」と思うようになった。GLAYが出てる雑誌は新旧問わず買ったし、本だって集めたりした。地方に住んでいた僕はライブのチケットも命がけだった。とにかく、あのころの僕には、GLAYが音楽のすべてで。彼らのことを知ることだけが、音楽の楽しみだった。

もちろんそうなれば、彼らと親交の深いバンドもけっこう目にするようになって、そこから僕はGLAYと交流のあるアーティストのCDも聴くようになる。そうして出逢ったバンドはみんなすばらしい人たちだった。僕の聴く音楽は、どのあみだくじを選んでもだいたいGLAYに行き着く。でもそんな素敵なバンドを聴いても、僕のなかではGLAYがいちばんだった。

いままで、かぞえきれないほどのバンドに感動し、興奮し、涙を流し、こぶしを握り、価値観を揺り動かされてきた。バカみたいにCDを買ったり、ライブに足を運んだりして、貴重なお金と時間をつぎ込んできた。それらをすべて無下にすることは僕は一生ない。でも、やっぱり僕はGLAYのことが、世界でいちばん好きなんだなって思う。長年こよなく愛したバンドも、アルバムをぜんぶ集めたバンドも、けっきょくのところGLAYの牙城に迫るものじゃなかったんだって。14歳の僕が直感で選んだ最初で最大の音楽。ロックバンドにこれほど心酔するなんて、これっぽっちも思っていなかった。

僕がここまで好きになれるバンドは、GLAY以外にありえない。それはいままでも、そしてこれからもずっとそれが続く。そう断言できるのは、いま僕がGLAYに抱いている愛着や、歴史や、理解といったものを、同じ地平で超えられるバンドが現れるとは、とうてい思えないから。同時に、ほかのバンドをGLAYほど好きになることも、絶対にない。それはとてもしんどいし、それにはとても時間のかかることだから。そうです、今日この日ほどGLAYを好きになるまでに、僕は疲れるくらい途方もない体力と歳月を費やしました。それこそメンバーが聞いたら、「なにもそこまで…(笑)」と苦笑するかもしれないくらいに。

僕のCDラックにならぶ「REVIEW」。自分の原点だからかもしれないけど、ヨレヨレになった歌詞カードも、バキバキになったケ―スも、どんだけ汚れても不思議と愛着がある。1枚のCDが、発売から10年後に、人ひとりの人生にこんなに大きな波を起こすなんて、考えると神秘的な気持ちになりますね。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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