【第3回】インスタント座談会

2014/07/04

instantradio

t f B! P L
  • れお: イェーイイェーイあおいくん元気ー? とつぜん呼び出してごめんねー。
  • あおい: いやいや、こちらこそ。声かけてもらえてうれしいよ。それにしてもテンション高ぇな。
  • れお: 今回もケータイでセルフ放送作家をやりながら、前回と同様にパソコン上でTumblrのチャットログ保存機能を使って、なにかあとあと読み返して楽しいものがつくれるんじゃないかと思って、あおいくんを誘ったわけなんだけど。
  • あおい: (急にテンションもどったな…)うん。ドラえもん編につづくやつね。僕とれおくんが話すテーマで、いま旬なものといえばアレだよね。
  • れお: はなしはやい。笑"" そうなんです1966カルテットのビートルズカバーアルバム『アビイ・ロード・ソナタ』が発売になったんです。今日はおもにそのはなしをしながら、ビートルズについてもおしゃべりしたいと思って。僕らのクラシックに関しての造詣の底みえる感じは棚にあげて。このCDのリリースを知ったとき、僕はあおいくんといっしょにいて…っていうかなんなら、あおいくんに教えてもらったよね。ナタリーのニュースを。収録曲をみて、あおいくんと「そうそう、これな。これなんだよな」と、思いのほか冷静にガッツポーズしたのおぼえてる。予想の斜め上を痛快にカッ飛ばす『アビイ・ロード』のリビルド(再構築)。
  • あおい: そうなんだよ。『ノルウェーの森』『ヘルプ!』とつづいて、キャバーンへの出演とアビイ・ロード・スタジオでのレコーディング。まさに予想だにしない展開を見せつつ、ここでリビルドくらいしてもらわないとビートルズの名を借りれないよね! だれも思いつかないような奇想天外なアイデアこそビートルズの武器。
  • れお: ビートルズって自分たちで曲をかいて、アレンジして、演奏して、うたう。そういうルーツはアイルランド移民の子孫である彼らのケルト人の血と、アフリカン・アメリカンのブラック・ミュージックが根本にあって、だからこそなりえた“特別な存在”なんよね。キャバーンにはビートルズ“みたいな”バンドなんていっぱいいたはずなのに。そういうこともふくめて、今回もまたあおいくんには座談会に付きあってもらうよ。
  • あおい: バチコイ。最初に1966カルテットって存在をれおくんから教えてもらったときのこと、すごい鮮明におぼえてる。そのとき僕は弾き語りでライブハウスを転々としてたんだよね。で、エリナ・リグビーのカバーを打ちこみとアコギでやろうと考えてたんだけど、行き詰まって(笑)。いろいろなミュージシャンのカバーとかYouTubeとかを参考にしようと思って聴き漁ってたときに、れおくんに『ノルウェーの森』を借りたんだ。いやあ、打ちひしがれた。
  • れお: 僕も最初に聴いたときはあおいくんとおなじ心境だったと思うよ。エリナ・リグビーってもともとクラシカルなアレンジやん? オマージュ的なカバーかと思ったら、後半からめちゃくちゃ凝ったアレンジされてる。あのあとけっきょくどんなアレンジでライブやったの?
  • あおい: んーとね、パーカスは前面に押したんだけど、最終的には1966カルテットのアレンジに触発されてますね、って感じになっちゃった。私的にはイマイチな出来映えで演奏したんだけど、それはそれとして置いといてだ。あの後に僕1966カルテットのCD全部買い集めたんだよね。
  • れお: だと思った。笑"" あおいくんライブにも行ってたよね。もうすっかりファンだね。1966カルテットの今回の『アビイ・ロード』のリビルドは、すっごいビートルズっぽい試みだと思うんだ。
  • あおい: 実験的好奇心をくすぐられたなぁ。ビートルズって、当時のバンドが思いつかなかったことを、次々と実験しては成功させてたじゃん。ジョージ・マーティンの知恵も手伝って、ものすごい数の遺産をポップスに残した。なんかそれっぽいなって。
  • れお: エピソードを聴いたのは7年もまえなのにまだわすれられないのが「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」なんだけど、ポールの求めたサウンドを得るにはすくなくとも90人態勢のオーケストラが必要だったそうなんだ。でもプロデューサーのジョージ・マーティンが用意したのは半分にも満たない40人編成のオーケストラ。オーバーダビングで音圧を稼ごうと考えたわけだね。でも当時のマルチトラック・レコーディングではそんな重ね録りの余裕もない。そこでマーティンはケン・タウンゼンドに「4トラック・レコーダー2台を同時にまわせないだろうか」と相談したってはなし。音の魔術師だよなぁホントに。
  • あおい: 片方のテープレコーダーから50Hzの信号を送り、電圧をあげてもう片方のキャプスタンモーターを動かせばシンクロが可能じゃないかって思いついて、やってみせた離れ業ね。僕も印象に残ってるよ。その前だと「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」なんかサイコーの離れ業だよね。オーバーダビングの際に回転を変えてテンポやキーをいじって、二つのテープを繋ぐなんて、今でこそデジタル音楽はPro Toolsで簡単にできるけど、当時のテープレコーダーでやるなんて正気の沙汰じゃない。まさにレコーディング・バンド。ほかにもビートルズは、テープの回転数をさげて歌を録音し、元の速度で再生することで声を変えたりとか、アーティフィシャル・ダブル・トラッキングとか、いろいろやってるよね。ジョージ・ハリスンが第三の男なら、ジョージ・マーティンはもうひとりのビートルズだから。
  • れお: さすがアポロのスタッフ、メカニズムまでくわしい…。ディズニー音楽やトラッド・ジャズとか、カントリー&ウエスタンとか、映画音楽とか、あとはなんだ「木の葉の子守唄」「国境の南」、果てはインド音楽。R&Bにとどまらない雑多なルーツを持つビートルズに唯一なかった要素「クラシック音楽」を盛りこんだのも、音大でクラシックや音楽理論を学んだジョージ・マーティンだったって有名なエピソードあるよね。でも、いくらビートルズが「ベートーベンをぶっとばせ」をうたってたとしても、音楽理論や演奏技術の向上を是とするクラシックと、日常の文化とリアルタイムで向きあってるポップスを、音楽的に溶けあわせること、言葉でいうほど簡単じゃないって思うんだけど、どう?
  • あおい: 簡単じゃないよ。サウンド・オブ・ミュージックで似たようなことやろうとして、すでに僕ら失敗してるんだもの(後述参照)。いまみたいに48トラックのマルチ・レコーディングがあたりまえだったら、彼らはいったいなにをしでかしただろうね。当時主流だった4トラック・マルチ・レコーダーはアビイ・ロード・スタジオに2台あったそうだよ。
  • れお: そうなんや! いまはどんなスタジオなんだろうね。でも、ビートルズっていうとまぁそれはそれは音楽的な面やファッション的な面からとらえられるけど、可視アートとしてのセンスも(とくにポールが)優れていたのもあって、今回の1966カルテットのジャケットにはニンマリだわ。たとえば『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットはポップ・アーティストのピーター・ブレイクのアイデアだけど、歴史的な偉人たちのまえにビートルズが立つっていう、なんともまぁよくやるよ(キリストより有名だ、とか言って全米を炎上させといて)、な革新的なデザインだよね。裏ジャケットに歌詞を掲載するのも当時としては考えられないことだし。紙の厚さや内袋にも世界で初めてこだわった傑作で、個人的には『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を名盤とする所以は音楽よりジャケット・アートだと思ってたり。
  • あおい: もっと言えば、ビートルズを60年代の一過性のアイドル・バンドから、ポップ・ミュージックの永遠のアイコンに仕立て上げたのも『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だよ。ヒットチャートの流行り廃りの音楽シーンに「ポップ・ミュージック」って最新鋭のカテゴリーを作ったんだから。
  • れお: ジャケットっていう意味では、そういうエピソードがあるだけに『アビイ・ロード・ソナタ』のジャケットのパロりかたにもグッとくるよね。
  • あおい: 裏ジャケもまんまだったよね。撮影は3月ごろ行われたみたいだけど、ビートルズが撮ったのは8月だったんだよね。おなじようなジャケット着てて、笑っちゃった。
  • れお: そうやったんや! ジャケット着てるから冬に撮ったんだとばかり思ってた。じゃあビートルズと1966カルテットはちがう季節のアビイ・ロードを歩いたわけだね。たしかに1966カルテットのほうは街路樹に葉っぱが繁ってなかったもんね。あおいくんの知識には脱帽ですわ…。え、じゃあさ、横断歩道の白線なんだけどさ、1966カルテットのほうはジグザグになっとるやん? あれの理由も知ってたりする?
  • あおい: あぁ、あれはビートルズのレコードのリリース後に、世界中からあの場所で写真を撮るファンが急増して、同時に交通事故の件数も激増したんだけど、その対策の一環として歩行者優先ですよって意味で改装されたんだったと思うよ。「あれもビートルズが残したワインディング・ロードだね」っていつだったか外国人が話してるの聞いたことある。
  • れお: わーお、さすが歩く豆知識…。聞いてみるもんだね。ついでに聞くけど、『アビイ・ロード・ソナタ』がリリースされると知ったとき、率直にどんな気持ちだった?
  • あおい: 不安&期待がフィフティ/フィフティだった。ビートルズのリビルドってすごい大変なことだし、でもそれくらいやらないと1966の数字は背負えないだろうなとも思ったし。なんで不安だったかって、僕らさ、2年くらい前さあさちゃんと3人でサウンド・オブ・ミュージックのサントラをナイン・インチ・ネイルズ風のインダストリアルにリビルドしようぜって言ってスタジオに12時間こもって途中で挫折したよね。完成された作品を一度壊して組み立てなおすのは並大抵の気持ちじゃできないんだって思い知らされた。その実体験があったからなんだよね。
  • れお: だ・よ・ねー。あはは…思い出したよ…。コーネリアスの小山田圭吾くんがhideさんのピンクスパイダーをリミックスしたやつ聴いたら俄然できる気がしたんだけどなぁ…。リビルドなだけあって、今回はどっちかっていうとクラシックの楽曲をキャンバスにビートルズで色塗りしたイメージだよね。これまでも「ヘイ・ジュード」にパッヘルベルのカノンをかぶせたりはしてたけど、ここまで大胆な編曲はしてなかったと思う。主軸はクラシックに置いてるものの塗装剤がビートルズなもんで、簡単に塗れるぶんかなり難易度は高い。はずだったのに。
  • あおい: ね。ものの見事にやってのけたよね。「イエスタデイ」はもう貫禄がでてきたね。もともとオリジナルには弦楽4重奏が参加していることもあって、そもそも論としてカルテットにはピッタリの楽曲かも。
  • れお: 解説文によると「夢」「夢のあとで」という楽曲がフィーチャーされてるそうなんだけど、それめっちゃおもろいよな。「イエスタデイ」といえば、ポールが夢のなかで聴いたメロディを具現化した曲として有名。まさに“夢のあとで”。
  • あおい: そういう一歩踏み込んだ見方もできるね。「ア・ハード・デイズ・ナイト」はまたも印象的なオープニングの「ジャ〜〜ン」のトーンを見事に再現してる。そこが楽しみでしかたなかった。『ノルウェーの森』ではバイオリンの松浦さんと花井さんだけの演奏だったから、前回より音が厚くなってる! これぞビートルズ。
  • れお: そうそう、オリジナルのこの音はメンバー4人のほかに、マーティンがスネアやピアノをオーバーダビングしてて意外に凝ってるんだよね。だいすき。この一音だけでロックに名を刻んだと言っても過言ではない、はず。「オール・マイ・ラヴィング」はオリジナルはカントリー&ウエスタン調の楽曲だけど、ジョージのソロ、チェット・アトキンス風のあのソロもフィーチャーされてるのが個人的によかったなぁ。
  • あおい: しかもかなりユニークな手法でジョージのソロをカバーしたね(カバーっていうのか…?)。編曲といい、構成といい、丁寧につくり込まれてるのがよくわかる。からの「プリーズ・プリーズ・ミー」は、もともとロイ・オービソンを彷彿とさせるバラードだったらしいけど、どことなくその雰囲気が(聴いたことあるはずないのに)イメージできるクラシックver.はなんか音楽の可能性を感じたよ、俺。
  • れお: そうだよね。あとダウンテンポで初めてみえてくる曲って意外と少ないんだよね。「ヘルプ!」もジョンが生前にバラードでやりたいんだって言ってたんだけど、吉井和哉さんがダウンテンポでアレンジしてうたったのがあったよ。「プリーズ・プリーズ・ミー」ってもとはバラードだったんだ…知らなかった…。
  • あおい: 吉井和哉さんね、知ってる知ってる(笑)。そのアルバムについてもあとで話そうか。つぎのナンバーは、ロンドンまで行っといてこの曲をやらずにどうするんだ「ペニー・レイン」。ご存知ジョン、ポールのふるさと郷愁ソングだね。これについてはどう思った?
  • れお: オリジナルは郷愁でありながら親しみやすくて、それでいて軽快な躍動と哀愁味あふれる感傷が調和するというポップ・ミュージックの内側からポールの創造性をぎゅい〜んと押し広げた快作だった。のを、1966カルテットはパストラルな雰囲気にリアレンジしてて好感触だったよ。これもダウンテンポのなせるワザかなぁって。
  • あおい: 僕これイマイチなんだよねー。れおくんの言うとおり、「郷愁のなかにあるホップステップな軽快な躍動感」が「ペニー・レイン」の魅力だと思うんだ。それをいったんくずして郷愁一択のカバーしちゃうのはなんかもったいないなって思っちゃって。後半との落差も少なかったし、つぎの「レディー・マドンナ」とのメドレーも考えるとここらでアップダウンのメリハリがアルバム作品として必要だったんじゃないかって。テンポ的にもピッタリだし。
  • れお: なるほどねー。たしかにこのアルバム、「オクトパス・ガーデン」とか「ア・ハード・デイズ・ナイト」とか、こう“ここで盛りあがろ!”な曲って少ないよね。まぁクラシック基盤だからそうなっちゃうんだけどさ。ソナタだし。「オクトパス・ガーデン」のさ、チェロの林はるかさんの音だと思うんだけど、カッって弦をはじく音、アレすごい好き。
  • あおい: ピチカートの奏法なのかなぁ。2Chellosが使ってたのとおなじ技巧だと思うけど。スラップみたいだよね。にしても、それだけに「レディー・マドンナ」は痛快。ピアノがリードアレンジの楽曲は江頭さんの見せ場だね。ジャズ・テイストもありつつブギウギ・ピアノとかの要素をからめたはずなのに、なんでエイト・ビートの王道ポップ・ロックになるのか不思議だよ(ポールってすごい)。さっき書いたようにビート感やグルーヴ感は1966ならではって具合に完成に向かってるから、かなりハイセンス。これもクィーンのカバーの賜物だね。
  • れお: 「アクロス・ザ・ユニバース」からの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」はかの“青盤”の流れを汲んでて、これはたしかフィル・スペクターがプロデュースした2曲だね(世に知られてるやつは)。過剰なほどのストリングス・アレンジもカルテットできれいにまとめてて聴いていてとても心地良い。
  • あおい: こう言ってしまうのはとても怖いけれど、今回のこの2曲はある側面からみたらオリジナルを超えているんじゃないかなぁ。最後の「ヘイ・ジュード」も、簡潔でありながら深い感動をリスナーに提供してくれるところはポール・マッカートニーも1966カルテットも変わらないね。
  • れお: イギリスってアメリカほど自由じゃないし、けっこうトラディショナルな国風だから、ビートルズのリビルドってけっこう度胸のいる選択だったと思う。だけどあおいくんがさっき言ってたとおり、そういう既成概念を打ち破ってきたのがビートルズなのも、また事実なわけで。
  • あおい: まぁイギリスとしても、日本はオノ・ヨーコさんの母国であるわけだし、そこまでの冒涜感は持たなかったんじゃないかなぁ。でもビートルズって、キャリアそのものを通じてポップ・ミュージックの礎じゃん? それをリビルドするのって相当の勇気が要ったと思うよ。
  • れお: 齋藤ジョニーさんが言ってた。ビートルズのオススメのアルバムは「ぜんぶ。基本。」って。たとえばスマッシング・パンプキンズってこれまで解散と再結成を経て9枚のアルバムをリリースしてるけど、よく言われてるのは「2nd『サイアミーズ・ドリーム』と3rd『メロン・コリー、そして終りのない悲しみ』さえ持ってればじゅうぶんだよ」という意見。4th以降はダーシーやイハくんの脱退、チェンバレンの逮捕が相次ぎ、実質ビリーひとりになったことや、それにともない音楽性がガラリと変わったことが理由で、「あれはスマパンであってスマパンでない」とも言われてるの(でもそう言うひとこそ4thも聴いてほしい。ただ脱線するからまた今度)。音楽性が変わることは諸刃の刃なんよね。
  • あおい: まさに全部が基本。スマパン好きだよねーれおくん。それつながりで思い出したけど、ONE OK ROCKや大橋トリオさんがニルヴァーナの「ネヴァーマインド」をカバーしたトリビュートアルバム、あれはニルヴァーナだからできるのであって、ビートルズではできないよね。海外のバンドにはよくあることで、キャリアの途中でメンバーの脱退などの理由で音楽性が急に変わって失望させられることが多い。あとはまぁ有名なヒット曲がはいったアルバムだけが「名盤」としてパワープッシュされたり。でもビートルズはちがう。すべてのアルバムに世界的なヒット曲があるし、音楽性がちがうにもかかわらずそのキャリアにおける「全部」が現代の音楽の「基本」になってる。アルバム、全部が。ウソみたいな真実。
  • れお: ああああそれ!! それニルヴァーナ!! 僕もおなじ例を考えてたよ(さきに言われた…)。ニルヴァーナは『イン・ユーテロ』とかも名盤だけど、取り沙汰されるのは『ネヴァーマインド』だけだよね。あとは何年かまえLUNA SEAが1stアルバムをセルフカバーしたんだけど、あれもLUNA SEAだから選ぶ余地があったわけで、ビートルズだとぜんぶカバーしなくちゃ意味がないもんね。
  • あおい: その「意味がない」なかの一部分で意味をなすのが『アビイ・ロード・ソナタ』ってこと。ビートルズのオリジナル・アルバムまるごとカバーはこれまで多くされてきたけど(ウィッシュ・ウィー・ワー・ザ・ビートルズのやつとか、イギリスの音楽誌『Mojo』の付録もなぜか僕持ってるよ)、ある意味、一番鋭角につっこんだカバーだね。でも、ビートルズのアルバムのリビルドっていうのには、そういう壮大なプレッシャーがかかる。それは1966カルテットのみなさんも、プロデューサーやエンジニアのみなさんも承知のはず。ちょこちょこっと曲をセレクトしてコンセプトアルバム的にまとめることとは難易度がちがう。でも「カム・トゥゲザー」なんかは僕もかねてからフェードインがあったほうがいいなって思ってたし、トップバッター的な曲でもないから、1966カルテットのほうがしっくりくるよ。
  • れお: そういった意味では今回の『アビイ・ロード・ソナタ』は“基本の一部分を再構築しただけ”ってことになるんだけど、でもそれでいいんだよね。プラネタリウムがすべての星座を映しだせないように、アウグスト・ザンダーが『20世紀の人間たち』ですべての人間を写しだせなかったように。これは1966カルテットが選んだ基本に忠実な武器のひとつなんだから。最初に言ってたよね、「だれも思いつかないような奇想天外なアイデアこそビートルズの武器」。「カム・トゥゲザー」は「アイ・ウォント・ユー」とのミックスもずいぶんマッチしてるから僕も好きだよ。流れるように演奏するのもオリジナルにはない感覚で。        
  • あおい: いい例え持ってくるじゃん(笑)。キャバーン公演、アビイ・ロード・スタジオでのレコーディング、で、この『アビイ・ロード・ソナタ』。この先どんな武器でかかってくるのかは、なんとなく読めない気もしないでもないけど、それはたのしみにとっとこうって話したよね、おとといくらいに。
  • れお: うん、プディングのCAPACITY超えないように取って置きすぎて腐らないていどにとっておくって言って通じなかったアレね…。こういうネタを、さも「みんな通じるよね?」みたいな感覚をもって使ってしまう癖はやめたいのだけどやめられない。UNISON SQUARE GARDENの曲にそういう歌詞があるんだよ!
  • あおい: ははは、そうなんだ(笑)。クラシックは残念ながらほとんどかじってないから知らないフレーズが出てくると「あ、こういう有名なクラシックの曲があるんだ」くらいに思って聴いてるんだけど、想像以上にフィーチャリングが絶妙で驚いたわ。 
  • れお: クラシックわかんないのは僕もおなじ。笑”” でもマッシュアップとかはよくDJのかたと遊びでやってたからむずかしさはよくわかる。クラシックとポップスって、言うなれば伝記と辞典みたいなものだと思うんだよね。
  • あおい: クラシックは伝統、ポップスは流行だもんね。揺るがない歴史と、流行り廃りはぜんぜんちがう。ところで俺もDJであることをお忘れかい?
  • れお: うるせぇ。しかも「ソレどういう意味?」って聞かれるの期待したのに僕が言いたいことしっかり理解してるし。流行の影にしおれていっても残るモンは残るんだよね。何年もまえのはなしだけどさ、僕ら「ビートルズのカバーアルバムってピンとくるの少ないよな」ってメールしてたやん? 『ノルウェーの森』以降、アレをガッツリ射止めてるんじゃないかなって。
  • あおい: そうなんだよ。ビートルズって世界中で一番カバーされてるバンドだし、ビートルズのカバーアルバムなんてそこらにいくらでも氾濫してるのに、アルバム一枚通してパーフェクトに近い作品ってなかなかなくて。おおかたイエスタデイかヘイ・ジュードでガックリくること多い。そういう意味では弦楽四重奏のイエスタデイと、パッヘルベルのカノンをかぶせたヘイ・ジュードは痛快作だったよ。クラシックアルバムでロックをやりながらクラシックをフィーチャーするのもおもしろかったしね。
  • れお: わかるなぁ。オアシスの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」とかさ、ケニー・ランキンの「ブラックバード」とかさ、ああいう単発のカバーで極上の楽曲ってすごいいっぱいあるけど、一枚の音楽作品としてまとまってるのって少ない〜んだよね。オアシスも「ホワットエバー」にビートルズの「オクトパス・ガーデン」をかぶせてたのいま書いてて思い出したわ。あおいくんって、1966カルテット以外に愛聴してるビートルズのカバーアルバムってある?
  • あおい: ノエルがうたってたね。ビートルズカバー、もちろんあるよ!これカバーに入るのかどうかわかんないけど、ずいぶん前にれおくんに紹介したビートマスのクリスマスアルバム。でもこれはクリスマスの時期じゃないと聴かないね(笑)。あとは「ブッチャリング・ザ・ビートルズ」が好きかな。ゴリゴリのヘヴィメタでビートルズも聴いてみるといいもんだけど、れおくんHR/HMは苦手だったよねぇ。
  • れお: うう…。ディープ・パープルとかイングヴェイ・マルムスティーンくらいしか聴いたことないや…。ハードなビートルズかぁ。「ヘルター・スケルター」はハードロックの元祖と呼ばれてるよね。こんど聴いてみよっかな。ジャンル別ビートルズで言うと僕は『カム・トゥゲザー』っていうアメリカン・カントリー風のアルバムが好きだよ。とくに目新しいアレンジや新解釈があるってわけじゃないんだけど、ただなぞってるだけのカバーにはない斬新さがあって。チェット・アトキンスやヒューイ・ルイスのパフォーマンスもグッド!
  • あおい: カントリー風のビートルズかぁ。ビートルズって、あらゆるジャンルを食いつくしたバンドだけど、それぞれのジャンルに限定した聴き方もおもしろいよね。そういう意味では1966カルテットもクラシック限定版ビートルズって感じになるのかな。ソウライブっていうジャズファンクバンドがいるんだけど、彼らの出した「ラバー・ソウライブ」っていうアルバムもジャズにしぼったコンセプトアルバムで、これもおもしろいよ!
  • れお: ラバー・ソウライブ! なんか名前からもうすでにビートルズ愛がただよってるね。笑"" ジャズもじつは詳しくないんだよなー…。HR/HMとふせて入門盤として聴いてみるよ。あとはビー・フォー・バンがオルタナ風にカバーした「リワイアーズ・ザ・ビートルズ」も好きだけど、ジャンルにしぼらないかたちで僕のオススメは、おまたせしましたEMIレコードが出したオムニバス・アルバムの『LOVE LOVE LOVE』。これはとにかく参加してる日本のミュージシャンの布陣が豪華で、ポップスから演歌まで新旧とりまぜていろんな面から楽しめるんだよね。
  • あおい: ハイきたきたきた(指パッチン)。まさかれおくんがそこ知ってるとはねー、さっきビックリしたよねー。そういやGLAYも参加してるアルバムだったかぁ。THE ALFEEのリフ散りばめまくりのアレンジは泣かせるよね。吉井和哉さんのバーラード版ヘルプ!だったり、忌野清志郎さんと仲井戸麗市さんの魂のパフォーマンスもグッとくる。れおくんはやっぱりGLAYから入ったの?
  • れお: あははーカブったね。僕はGLAYがAshes.EPってシングルで「マザー・ネイチャーズ・サン」をカバーしたときからそのアレンジが好きで、アルバムとしてEMIがまとめることになったときはうれしかった。清志郎とチャボも古さを感じさせない。じつは「アイム・ソー・タイアード」をうたってる湯川潮音さんとLEO今井さんのうしろで演奏してるジェームス・イハくんがいることも好きな理由のひとつなんだ。だいすきなギタリストなんよね。
  • あおい: ジェームス・イハって、さっき言ってたスマッシング・パンプキンズのギター弾いてたひとだよね(ホントれおくんスマパン好きだね)。日系顔だからよくおぼえてる。なるほどねぇー、たしかにあのアレンジは染み入るものがあるよね。今度それを踏まえたうえでアイム・ソー・タイアード聴いてみるよ。でもオルタナではなかったよね(笑)。
  • れお: あ、えーっとね、イハくんはバンドではオルタナティブ…まぁグラムロックみたいなゴリゴリのギター弾いてるけど、ソロではハートフルなやさしいギターポップなんだ。ところであおいくんって、オリジナルの『アビイ・ロード』についてどんな印象ある?
  • あおい: そうなんだ〜。僕はアビイ・ロードは明確に「これで終わりね」っていう意図があったはずだと思う。その渦中において奮闘したポールとマーティンのおかげで、結果的に「ふぅん、まぁ、なかなかいい出来じゃない?」くらいのアルバムには仕上がったんだから一種の奇跡だ。バンドとして解散寸前な時期だっただけに、あまりにまとまりに欠ける作品っていうか。最高傑作とうたわれることの多いアルバムだけど、個人的にはそうは思わない。ジョンはプラスティック・オノ・バンドで明らかにあたらしいスタートを切ろうとしていたし、ジョージは「サムシング」「ヒア・カムズ・ザ・サン」とかの名曲を書き始めて、目覚めた才能にビートルズとは違う可能性を見ていた。まだまだ心残りがあるポールに、煮え切らない思いを抱えながら見守るリンゴ。そんな状態の4人のセッションには、多かれ少なかれ哀愁を感じちゃう。どちらかというと個々の演奏技術が向上してより調和されたバンド・アンサンブルを聴くってのが僕の『アビイ・ロード』観。
  • れお: B面は未完成曲をメドレーミックスしてなんとか体裁を保ったものの、実験的な音楽はあまりないよね。あ、それいっしょ。『アビイ・ロード』を最高傑作って言い切ることは簡単じゃないよなぁ。「解散寸前の四人が最高傑作をつくりあげ」れるわけないじゃんって思う。でも僕は「アビイ・ロード」のほんとうの哀傷と憂愁はジャケットにあると思うんよね。ポールは可視アートにすぐれた人物だったやん? おそらくは撮影の手間すら惜しんだメンバーやスタッフが、「もうスタジオのまえでよくね?」みたいな発案で決まった写真なんだろうけど、空中分解の行きがけにあった4人が、足並みをそろえて歩いてる! 当時のファンは淡い期待を抱かずにはいられなかったであろうポールの最後の希望だったんだろうなって、もうね、このジャケットの意図をちょっと踏みこんで読むだけでも涙ものですわ。
  • あおい: そこまで考えたことなかったなぁ(笑)。これは有名な話だけど、伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」って小説で、濡れ衣を晴らそうとする主人公の姿が、アビイ・ロードB面メドレーを必死につなげてビートルズ再起をはかるポールの姿と重なるんだよね。1966カルテットの『アビイ・ロード・ソナタ』も、たんにアビイ・ロード・スタジオでRecしたからってだけの理由だけじゃなかったのかもね。そうそう、1966カルテットを聴いてて思うところが僕ひとつあってね。このひとたちの演奏って、アンサンブルなんてもんじゃないと思うんだ。ドライヴ感。パンクバンドが必死に求めてるグルーヴを、エレクトリック・ギターも生ドラムもなしに表現してる。キャバーンがうたったのもうなずける。超わかる。バンド・アンサンブルという意味ではたしかにビートルズの最上級の位置にある『アビイ・ロード』をリビルドして、ここまでの縦ノリ感を出せるのも事実としてすごいし、クラシック特有の横ノリもバランスよく組み込まれてて、ほんと言うなればジョン・レノンの歌声を聴いている時みたいな、静と動がDNAみたいに絡まってる感覚に陥るんだよね。
  • れお: そうなんだ。ゴールデンスランバーズ、たしかに中核的な名曲だよね。ドライヴ感かぁ。言われてみれば調和というよりはビート感あふれる四重奏だよね。それとさ、1966カルテットがなぜビートルズのカバー・アルバムをシリーズ化できるくらいリリースできるかっていうと、それもまたビートルズだからなんだよね。ビートルズには、ボブ・ディランやジム・モリソンみたいに詩人としての確固たる信念があるわけでもないし、ローリング・ストーンズやアニマルズやマンフレッド・マンみたいに徹頭徹尾ブルースにこだわる姿勢もない、いわゆる万能音楽家のあつまりだったから、なんでも受けいれる、なんでも吸収する。苦手なコースもなければ、決定的な決め玉もないピッチャーみたい。ポリシーのない柔軟な彼らは、世界じゅうの民族音楽をポップ・ミュージックに昇華してしまう。だからバラエティ。だからたくさんある。だからカバーできる。
  • あおい: ものがたりのように制作された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を特別視しても、短いキャリアのなかでこれだけのカバー曲がセレクトされてアルバムとして氾濫してる。ビートルズじゃないとできないことだよ。 れおくんって、初めてビートルズ聴いたのはいつだった? 
  • れお: ビートルズを知ったのはGLAYのTAKUROさんのエッセイに出てきたからなんだけど、聴いたのは中学のときの音楽の授業。各自すきなCDを持ってきて、授業で聴いて感想を言いあう、みたいな機会があったんだわ。そのころはJPOPはUVERworldやHIGH and MIGHTY COLOR、ORANGE RANGEみたいなミクスチャー系が流行ってたり、スキマスイッチやレミオロメンもみんな聴いてたなぁ(ジョン・レノン・スーパー・ライブに藤巻さん出演してたね)。aikoさんも僕はすきだった。女の子は木村カエラさんとか大塚愛さんとか聴いててさ。その授業で僕はYUKI姉のCDを持って行ったんだけど、クラスにひとり、ビートルズを持ってきた変わり者がいてね。「イン・マイ・ライフ」をかけてくれた。それが最初の衝撃。あおいくんは?
  • あおい: 僕は父の影響で、じつは赤ちゃんのときから聴いてたらしいんだ。もちろん覚えてないけどね(笑)。物心つくまえからマンフレッド・マンやジェリー&ザ・ペースメイカーズを聴いてた。って言ったら、なんか音楽的環境みたいな英才があるみたいだけど、まぁ実際のとこ貧しいながらもそう呼べる環境はあったと言えるかなぁ。才能はないみたいだけどねぇ。「レット・イット・ビー」をレリビ〜レリビ〜って歌ってたのが小2のとき。担任の先生には驚かれたけど、たしかに僕だっていま8歳の子がビートルズ歌ってたらビックリする(笑)。ねぇねぇそのビートルズのCD持ってきた変わり者のクラスメイトがもしかしてマイちゃんだったり?
  • れお: あははー、正解。マイと友達になったのがそのときだよ。でもすごいね、ジェリー&ザ・ペースメイカーズなんて高校卒業するまで知らなかったわ。音楽に詳しくなるはずだよそりゃあ。
  • あおい: そうなんだー。れおくんが「イン・マイ・ライフ」に妙にこだわる理由がわかった気がするよ(笑)。いやいや僕もアメリカの音楽にはけっこう疎いよ?グランジ・オルタナやNYパンクだったられおくんのほうが造詣が深いはず!でも音楽なんて知識で語るもんでもないしね。好きな音楽を追っかけようぜ!
  • れお: そうねー。でもたまにすーごい豊富な知識をまくしたてるひとおるやん? ああいうひとみてると「うーん僕はまだまだだなぁ」って思うなぁ。知識がなくても音楽は聴けるけど、知識がなかったら場合によっては音楽は語れないもんね。
  • あおい: なるほど!たしかにねー。語る上では知識はいるかもねぇ。僕ももっと勉強するよ。でもロック史ほど学ぶのがむずかしいジャンルもないよね。教科書もないし、先生もいないし。れおくんはどうやってバンドのバイオグラフィーとか雑学とかを知ったの?
  • れお: ロック史はむずかしい! 主観ひとつで軸がズレるし、けっきょくは自分の音楽史がロック史として残るだけじゃないかなぁ。教科書とか先生とかは、僕はGLAYがそうだったよ。GLAYつながりで90年代のヴィジュアル系を聴いたりしたし、TRANSTIC NERVEもLa'cryma Christiもそうやって入った。GLAYをプロデュースしたのがどうやらX JAPANというバンドのYOSHIKIさんというかたらしいぞと知ってXも聴いた。さっき言ったようにGLAYのTAKUROさんがビートルズファンだったからビートルズに興味もったり、HISASHIさんがパンク好きっていうからセックス・ピストルズ買ったり。そこからバズコックス、ジェネレーションX、スージー&ザ・バンジーズ、イーター、スティッフ・リトル・フィンガーズ、ギャング・オブ・ウォーとかね。ビートルズからもおんなじようにアニマルズ、ホリーズ、ジェスロ・タル……ってたどってったよ。だから僕のマインドマップの真ん中にGLAYがいる感じかなぁ。
  • あおい: ああ、そうだね!たしかにロック史の教科書って、結局は好きなバンドだったりするね。あと僕は海外のバンドのCDだと歌詞カードについてる解説文やライナーノーツが知識のもとだったりもしたよ。ビートルズやピストルズって解説本が何冊もでてるけど、ちょっとコアなバンドだったらそんなのもないから。貴重な情報源だった。知らないカタカナが出てきたらネットで調べたりもしたなぁ。
  • れお: やったやった。笑"" みんなおなじ道あるいて来てるんだね。僕もそんな感じで勉強したよ。ロック史モノの本も何冊か持ってるけど、けっきょく主観や私情が入ってるんだよなぁ。こんどあらためて情報交換しあおうよ!
  • あおい: ロックも人が作ってきたものだもんね。それいいねー。れおくんの考え方とかのぞけて楽しい!やっぱり音楽は数学とちがってなにをするにも楽しいね。
  • れお: 数学、僕も嫌いだったなぁ。高校、理数科だったのに。笑"" うん、もっと知識をたくわえよう。そんでこんどまたできたらビートルズとかしゃべろう。今日はありがとう、ちょうどいい感じの長さになったかなぁ(あるいは長すぎか)。すごい刺激になったよ。
  • あおい: オーライ!僕の方こそありがとう。また座談会誘ってよ。バイバイ!

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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