音信不通だった友達から7年ぶりに「ブログ読んでます」とメールがきた

2014/08/10

essays

t f B! P L


中学を卒業したあとに音信不通になって消息を絶っていた友人から7年ぶりくらいにEメールで「ブログ読んでます」と連絡がきた。なんだ、このゾッとするような、安心するような。

その友人、さなみとはおなじ中学だった、わけではない。いやちゃうんかい! とツッコミたくなるようなはなしだが、もうすこしさきを聞いてほしい。

さなみはぜんぜんしゃべらないし、僕といるとき以外はひとりでいたし、5の倍数の日には髪の毛をポニーテールにするという変わった性格の持ち主だった。

さなみとは塾がいっしょだった。僕たちの通っていた塾は隔月で実施される県内規模の実力試験の結果でクラス分けされて、なんなら席順まで指定された。そんななか、僕とさなみはなぜか3年間で8回もとなりあわせになるという奇跡的、かつ運命的な中学時代をすごしたのだ(!)。

これでさなみがとびきりかわいい女の子だったらもう言うことはないのだけど、さなみはそこそこかわいい女の子だった。じっさいけっこうモテたらしい。目はパチクリしてておおきいし、肌は病的一歩手前くらい白いし、背はちょっと低いけど手足は細くて長かった。

席が4回めにとなりだったころのこと。ある日、授業が始まる20分まえに教室にいたのは僕と彼女だけだった。広い教室の片隅に思春期(すくなくとも僕はそうだった)の男女がとなりどうしで二人きり。

き、緊張する…。

ひょうひょうとヘアゴムを指でコネクリまわしていたさなみとの空気に耐えかねて、僕は彼女にいくつか質問をした。初めての会話だった。あ、そうか、いま思えばこの日は5の倍数だったんだ。

「あの…、よくとなりになるよね、僕ら」
「え? あ、うん。わたしも思ってた。ビックリよね」
「たしかR中だったよね?」
「うん、そうだよ」
「部活なにやってるの?」
「なにもやってない。運動神経わるいし、ウチの中学って文化部がすくないの」
「そっか。いや、ごめん。変なこと聞いて」
「いいよ、気にしてないから。謝ることじゃない」

ここまではわりかし好感触に答えてくれたから、僕も安心して会話を掘り下げることができた。もしもこのそこそこかわいいさなみが僕の「学校終わったら、ふだん家でなにしてるの?」というつぎの質問に「うーん…なんだろう、オナニーくらいしかしてない」という、実直もはなはだしい回答をしてこなかったら、僕は彼女のことを好きになっていたんじゃないかとすら思う。

その後の沈黙の重みといったら、もう。さっきまでの笑顔をとりつくろいつつも、よくわからない汗までながれていた。はやくだれか友達が教室に入ってこないかなーって切に願っていた。

これが初会話じゃなかったらなかなかの打ち解けっぷりをしてたと思う。さなみと僕は波長がよくあった。じっさいこのあと何ヶ月かをかけて僕とさなみはかなり打ち解けた。それにしてもオナニーって。

志望校のことで葛藤ができれば、先生より同級生より、だれよりも親身に話を聞きあった。親に言えない思春期ならではの悩みも共有した。おたがいの名前を謎に褒め、将来自分たちに子どもが生まれたら、さなみの息子には「礼央」、僕の娘には「沙波」と名付けるという変な約束まで交わした。

周りにだれもいないときは

「今日もオナニーしたの?」
「ううん、今日は寝るまえにするの!」

とか平気で話す飛ばしっぷりだった。

いま思えば、変に「ひとりエッチ」とか「マスターベーション」とか言わずに「オナニー」と言ってのけたさなみには、かなり好感がもてる。いやまぁ、いま思えばなんだけどね…。当時はピュアな少年だったのさ。

そんな下品すぎるエピソードも含みながら、卒業後さなみはミッション系の私立の高校へ進学した。僕はといえば公立高校の理数科へ進学した。進学してからはたぶん2,3回メールのやりとりをしただけで、さなみは煙が消えるように音信不通になった。

心配だったけどなにしろ共通の友人もいないし、まぁ死んじゃいないだろうと思ったまま約7年。「ブログ読んでます」の強烈すぎる近況報告。さなみよ、おまえはいったいなにをしていたのだ。そしてどうやって僕のブログを見つけたのだ。

思い返せば、いつだったか(高三の秋だったか)に、さなみを学園祭に誘おうとメールしたら、送信エラーで返ってきたことがあった。すこし寂しかったけど、たしかに最近は連絡をとっていなかったから、さなみはメールアドレスを変えたまま僕にはおしえてくれなかったんだなと納得した。そのころから僕はメールアドレスが変わってないので、彼女の連絡先には僕のメールアドレスが保存されっぱなしだったのだろう。それでいまになって唐突にメールをよこしたのだろう。なんてやつだ。

この「ブログ読んでます」の着信以来、わりかし頻繁にさなみとは連絡をとっている。

それで、最近よく眠れない日が続いていて、さなみに「眠れない」という旨のメールをおくったことがあった。さなみは3分後くらいに「オナニーしたらグッスリと眠れるよ」と、かわいい絵文字とともにアドバイスをくれた。あのころからぜんっぜん変わってないな、きみ!

いま地元にいるそうなので、先日7年ぶりにさなみと会った。髪の毛はすこし長くなっていたけど(あたりまえだ)、スポーティな服の趣味も、話しかたも、話題転換のときの指パッチンも変わってなかった。たぶん性格もだ。

さなみにはいま付き合っている彼氏がいるらしく、どうもその彼と相性が合わないらしい。そんなこと言われたって、男女の関係には我慢がつきものなのだよ、とえらそうに彼女に言ってみたら、どうやらそういう話ではないらしい。

「彼ね、下手なの」
「なにが? 料理とかするの?」
「いや、生活習慣とか生きかたとかじゃなくて、セックスが」
「……」
「セックス、すごい下手なの」
「はぁ」(すこし話題についていけなくなる)
「たぶんね、れおくんのほうが上手だと思うの」
「え? ああ、ありがとう」(ちょっとうれしくなる)

いや、ありがとう、じゃねぇよ! だいたいさなみ、僕はおまえと男女の関係をもったことはないのに、僕のセックスのなにを知っているというのだ!

彼氏のセックスを元カレと比べる女性がいることは知っているが、友達と比べる(しかもヤッたことはない)のは、さなみ、おまえがはじめてだよ!

しかもさきの会話から察するに、さなみは僕がかなりセックスが下手だという認識をもっていたと読みとれる。そんなことはない(はずだ)し、褒められているのか貶されているのか、いまいち判別できない。

「だから抜けなくてさ、癖が」
「癖?」
「うん。オナニー癖」
「ああそれ、まだあるんだ」(虚空を見つめる)
「セックスもしてるけど、それ以上の頻度でオナニーしてる」
「ああ、うん」(このへんで完全に話題についていけなくなる)

なお我々、この会話をミスター○ーナツの店内で白昼堂々としておった。

なにが言いたいのかというと、さなみはほんとうにまっっっったく変わっていなかった、ということだ。たぶん、今日もオナニーしてる。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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