【感想】Catcher In The Spy / UNISON SQUARE GARDEN

2014/09/04

感想

t f B! P L
音楽って本来、難解さも堅苦しさもない、だれにでもたのしめるものなんだ。はしゃいでうたって、踊り狂って、微動だにせず黙って聴きこむ。そういうものなんだ。

変拍子をスピーディに展開しながら、心のいちばん固いところに深く突き刺さる言葉をマシンガンみたいに次から次へとぶちこむ「桜のあと(all quartets lead to the?)」。印象的なピアノから幕をあけて激しさと静けさを包容しながら“透明感のあるトゲ”というバンドの真骨頂を惜しげもなく詰めこんだバラード「harmonized finale」。シングル曲はいつもどおりたった二曲。それだけでじゅうぶん勝負できるという彼らの自信と度胸。

シングル曲が2曲ともアニメの主題歌に抜擢されてるんだけど、特筆すべきはこの田淵さんのソングライティング。このひとは、アニメのファンも、バンドのファンも、どちらも十二分に納得させることに関しては、だれよりも自信がある(ように見える)。アニメの世界観と、バンドのアイデンティティとを、黄金のバランスで楽曲に落としこんでくる。

そういったシングルを含め、いま、日本語をどのように響かせばいちばん心にのこるのか、もっとも実験的なソングライター・田淵智也がお送りする渾身の12曲。日本語で音楽を聴くすべてのひとたちに聴いてほしい。日常にあふれる、およそ詩的とは言えないありふれたワードから本質を抜きとる田淵さんのリリカルなあそび。鋭角に高速でえぐり取ってくる本質的な言葉は、この曲イイネとかそういう次元では語りきれないメッセージを持ってる。三人が満身のパフォーマンスで魅せてくれる。ファンのひとならぜったいわかるんだけど、ユニゾンの歌詞って、ブックレットひとつに好きなフレーズや言いまわしが、100個くらいあるんだよね。

あいかわらず斎藤くんのソリッドなギターサウンドを筆頭に、堅実ながらも暴れまくる田淵さんのベースラインと、手数の多いグルーヴィな貴雄くんのドラミングのアンサンブルはより研ぎ澄まされている。殺傷能力でいえばロンドン・パンクのルーツ・ミュージックさえ感じるのに、れっきとした大衆音楽に落としこんだのはThat’s ユニゾン、お手のもの。

「みんなといっしょにたのしまなくてもいい。僕らはいつもどおりたのしむから、君も君のやりかたでたのしんで」ってユーモアをまじえて斎藤くんがMCで語りかけるようすが目に浮かぶようで、ここ何年かユニゾンが追い求めてきた音楽への個々のスタンスをスタジオ音源として凝縮した力作。驚いたことにシングル2曲以外にピアノもシンセもホーンも一切なし。前作『CIDER ROAD』が、それらを積極的に取り入れてて、なおかつそれでもUNISON SQUARE GARDENの音楽は成り立つんだよと証明したアルバムだとするならば、今回はそれらをとことん排除したギターロック。メンバーそれぞれが自信と確信をもって臨んだからこそできあがったサイコーにカオティックなサウンドメイク。

いままでどおりエッジーなメロディラインを筆頭に通常営業のUNISON SQUARE GARDENがこれでもかと。じつはシングル「桜のあと(all quartet lead to the?)」の初回盤DVDに収録されてる「マスターボリューム」「WINDOW開ける」「ため息 shooting the MOON」の3曲はこのアルバムへの伏線かと思えるくらいで、攻撃的なユニゾンを堪能させてくれる。よくカップリング曲につぎの路線への伏線が張られていることもあるけど、DVDにだってそれはあるのだよ。

にしても斎藤くんのボーカリゼーションがすごい。ポリープの手術する期間中、ずっと自分の「歌」と真摯に向き合ってきたんだなってわかる。「これを乗り越えたらすごいボーカリストになれる気がする」という彼の思いこみは正しかった。すごいボーカリスト、ここにいます。

Catcher In The Spy。ユニゾンって、ある意味スパイ活動のようなバンド。好き勝手にあっちゃこっちゃに仕掛けして、引っかかってくれたらいいなていどの、そんなバンド。「気づいたら、すごいことになってた」が田淵さんの理想らしいけど、帯にも書いてあるように、事件なら、とっくに起きてる。聴けば、血がたぎる。毛細血管まで、スリリングなサウンドが浸みこんでくる。聞きたかった言葉が続々とうたわれる、この興奮と高揚感。UNISON SQUARE GARDENにしかできない。奔放な発想(ジャケットのバルブ電球)と、生々しくえげつない圧倒的な迫力。聴くものに有無を言わせない、「サイレンインザスパイ」のイントロでガッツポーズをキメさせた有象無象をぶっ蹴飛ばす喜怒哀楽。



ユニゾンの音楽には、ひと一人の人生をあざやかに彩る魔法があるわけでもないし、たったひとつの恋をめぐるロマンティックな物語があるわけでもない。これぞってものって名言できる永続的な真理があるわけでもないし、不可能を可能に変える劇的なトリックがあるわけでもない。遠くのふるさとを思う哀傷と憂愁があるわけでもないし、現代社会を鋭くえぐりとるアンチテーゼがあるわけでもない。そこにあるのは、自分だけがたのしい世界。完全究極体の自己中心ワールド。世界の真ん中はそこだよ、って「ノンフィクションコンパス」でうたってたっけな。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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