【感想】ハツカネズミの時間

2015/01/29

感想

t f B! P L
大好きな漫画は数あれど、冬目景さんの漫画はいちばん好き。そして彼女の作品のなかでも、この「ハツカネズミの時間」は特にお気に入り。

たぶん登場人物の個性にいちばん振り幅があるのが大きいと思う。たった4巻で完結してて、さほど多くのキャラが出てくるわけでもないのに、冬目さんの漫画のなかではこの作品がいちばんキャラの個性が目立つ。性格もそうだけど、ビジュアル面がとりわけ多様で、茗や梛なんかは他の作品をみてもああゆうふうな容姿のキャラはいない。ただ、槙の髪型、初期はわりと長かったのに、だんだん短くなってきて、最終的には「イエスタデイをうたって」のリクオにかなり近いビジュアルになってたのが少し残念。冬目さんも言ってたけど、男の子キャラの髪型のバリエーション少ないですね。桐子はなんだか「羊のうた」の千砂みたいな印象が最後まで拭えなかった。これは桐子と千砂の性格的な問題だと思う。

椋や棗の人物設定も、物語の魅力を見事に引き出していて、しっかりと自分の役割を演じてる。彼らがいなかったらいろいろと不都合だろうなあ、なんて思うシーンもちらほら。

物語の発想は、レトロさはないものの、冬目さんらしく独創的で、限りなくフィクションに近いリアリティがある。理論的な学園の背景設定がきちんとしているのも好感。とっつきにくい話ではあるとは思うのだけれど、彼女の作品の特徴をよく知るファンとしてはこうゆうの好きでたまらない。

「恋」ってゆう言葉を一度も使わなかったのは英断だと思う。学園の設定もあるし、世間を知らない彼らにその概念を突きつけなかったのは後味がよかった。茗の槙に対する気持ちは恋なのか、槙が桐子に思う感情は恋なのか、桐子が梛に求めたものは恋なのか。たぶん恋愛要素を差し込む必要はまったくないし、これが恋なのか、とはっきり表現して終わらせたとしても消化不良だったはず。恋じゃない(そもそも恋がなんなのかを知らない)けども、その人が必要で、いっしょにいるのがあたりまえの空気みたいな存在。槙が桐子に感じていたのも、茗が槙に感じていたのもそんな気持ちで、だから茗が脱走を自分の意思で躊躇したときの心情は、嫉妬とか恐怖とかゆう言葉で片づけられるほど簡単なものじゃない。

エンディングは恒例の賛否両論あるみたいだけど、僕は冬目さんの余韻の残し方がわりと好きなほうなので、ほかの作品にしても不満な点はとくになかった。もう少し連載を続ければ梛と檀の過去や、入院したその後の梛、そして桐子の行動や、進学後の椋と茗も描けたとは思う。でもそれはしないほうがいいんじゃないかなあ。みんなそろってゴールインはハッピーエンドかもしれないけど、それだけがしあわせじゃない。少なくとも槙はあの街で、金井くんや三夜さんといっしょに自分の自由と幸せを手に入れた。桐子の姿が最後に見られてもよかったなとは思うけど、あのワン・シーンで締めくくるのも僕は好きだった。

中盤から進んだ檀の心情の変遷は、とりわけ言葉での葛藤の描写はなかったけど、茗に渡した薬について木綿子さんが問いただすシーンや、会長が発作で倒れたときに薬をとることをためらう彼の姿など、絵による隠喩と直喩との描写で上手に伝えてくれた。



単行本4巻ってゆうのは、絶妙なバランスがとれたボリュームだと思う。これがいまひとつってゆう声も多いけど、僕がなぜ冬目さんの漫画が好きなのかってゆうと、そうゆうほかの人が苦言を呈すとゆうか、納得いかないような彼女の価値観が、僕(と、冬目さんの作風に肯定的な方々)の価値観と、うまいぐあいに噛みあっているのだと思う。だから彼女の漫画は、好きなんだよね。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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