【感想】ACONY / 冬目景

2015/02/19

感想

t f B! P L
妖怪、物の怪、化け物、そんな愉快な非人間たちが住む不思議な建築「しきみ野アパート」を取り巻く、ちょっと変わった物語。完結作である3巻目のあとがきで冬目さん自身「この漫画の主人公は、表向きにはモトミだったりアコニーだったりするのですが、私の中ではしきみ野アパートなのです」とおっしゃっているとおり、この作品はどの話もしきみ野アパートが絡んでくる。主人公はアパート、それはエンディングが証明してる。

中盤から出てくるアコニーのママをめぐるエピソードは、わりとすぐにあっけらかんと済む。もちろん物語はこれで終わるわけではないけれど、アコニーにまつわるかねてよりのテーマはずいぶんとあっさりと終息する。そのあとは終始一貫した、しきみ野アパートをめぐるコメディチックなほんわかドラマが展開される。これがこの漫画の個性であって、謎は謎のまま、止まったような時は止まったようなまま、それでよかったのだと思う。長さもちょうどいいくらい。

きっと冬目さんの頭のなかには、アコニーの「不老不死」に関する研究のプロットはできているんだけど、そうではなくて。アコニーの秘密をめぐるシリアス路線よりも(もちろんそれもだいたい明かされるんだけども)、しきみ野アパートとゆう異質な空間に住む、奇抜な登場人物(?)たちのブッ飛んだ話を楽しむのが、この漫画をいちばん味わえる読み方だと思う。最初は当然ながらアコニーと基海の出逢いから始まって、そこから掘り進む摩訶不思議なアパートのハチャメチャ感、それがおもしろい。

巳園さんの性格の振り幅や、吉岡さんの飄々とした振る舞いや、しーちゃんの独善的な言動など、キャラの個性があまりに突出していてふつうのストーリーでは収束できない。それをナチュラルにまとめあげるのが「しきみ野アパート」の存在であって、そこに放たれた表向き主人公の基海の価値観がそれを「ヘンなの」って読者と共感する。一般人目線は主に基海だけだけど、おかしな住民たちもまるっきり「変人」な考えを持ってるわけじゃなくて、お花見や送別会も開く。人間だって、物の怪だって、出逢いはおかしな偶然だし、別れはもの惜しいものね。

もうちょっと言えば16人の佐藤さんたちの話や、アコニーのママがメインで話を進める回があったらうれしかったんだけど、まあそれはちょうどいい長さで終わらせるためには仕方ないですね。寡黙でミステリアスなのが16人の佐藤さんたちの特徴だし、アコニーのママは途中からけろっと出てきてちゃっかり物語に参加してるくらいがちょうどいいのかも。


冬目さんのファン以外の方が読んでうなずけるとは言いがたいのだけど(もともと個性的な作風だし)、気楽に読める漫画としてはお気に入り。たらたら他愛ない話、大好き。イメージとしては、畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズが近いなって、たったいま思いました。冬目さんの漫画のなかでも、ちょっと異色だから、楽しみ方にもいろいろあるな、と。エンディングでアコニーがああゆうかたちで出てきたのはセンチメントな演出にはありがちだけど、この漫画にはマッチしているし言い終わり方だと思う。基海とパパの会話も好きだ。「つまんない人生のイベントをクリアしながら生きていく」過程で、こんなアパートに住むのも、悪かないかなあって思ったけど、やっぱり我が身にとなると願い下げだわ。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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