【感想】羊のうた(映画)

2015/03/09

感想

t f B! P L
原作が完結する前、連載途中に制作されたとゆうこの映画、もちろん原作は大好きな冬目景さんの代表作「羊のうた」。

原作が登場人物の心中の葛藤を上手に表現しているだけに、映画化されたこの作品も、小栗旬さん演じる高城一砂の心情描写が(いままで観たほかの映画よりも)多い。映像に映される一砂の行動に、それと同時進行で心のなかが語られる。演技とシンクロする台詞よりも、あくまでそれらは別であって、一砂の葛藤を体現する行動を内省的な心情で説明してる感じ。でも「半分嘘で、半分本当です」の台詞は、実際にしゃべらないほうがよかったんじゃないのかなあ。

千砂のイメージはだいぶ変わって見えた。漫画から見てとれた千砂の印象は、生命力は薄いものの声の芯はしっかりしていて、高城の病を抱えながらもそれをきちんと受けとめて意志強く生きているといった感じだったのだけど、加藤夏希さん演じる千砂は、それはもう等身大に病人だった。生命力はもちろん、声も細く、いまにも消えてゆきそうな台詞は、リアリティこそあるけど説得力には欠けるなあなんて思ったり。とくに高城の病気を一砂に話す序盤のシーンでは、漫画だと千砂が言うからこその怪しさと胡散らしさがあって、それでもどこか説得力のある真実味があったのだけど、映画では絵空事を言う生き別れた謎の姉、みたいな印象がぬぐえなかった。

ただこれは漫画と映画で違った物語だと解釈したほうが、なにかと都合がいいのかもしれない。キャスティングによるイメージもそうだけど、プロットも原作を忠実に再現しているわけでは決してないので、ある程度は別物をみるとゆう覚悟が(映画化にはありがちだけど)必要な気がする。八重樫さんはあっけらかんと一砂に「好き」って言っちゃうし、設定もところどころ違う。まあそれはこの映画の制作段階で漫画のほうがまだ完結していなかったせいで、設定を濁さざるを得なかったのかもしれない。それにしても「血」って、漫画では黒く塗られてるからイメージが湧きにくいけれど、映像だと真っ赤だから破壊力は抜群ですね。

とはいえ映像の美しさは作品の随所に感じられて、日本の情緒や、風景の懐かしさ、物語の怪しさ、これらは原作に上手に沿っているなと。レトロで、絶望的で、とことん暗くて破滅に向かうってゆう意味では忠実な再現度は感じられて、そこに原作とは違う話を溶けこませることで、「生きるってなんだろう」「なんのために? 誰のために?」とゆうテーマを追求してる。



先にも書いた、連載中の制作だったことがたぶんこの映画にとっては致命的で、やっぱりエンディングも中途半端になるのが必然的だった。冬目さんの作品は(賛否両論あれど)エンディングにこそ評価が顕著に表れるし、一砂と千砂が愛し合う時間も二時間とゆう枠では短すぎたように思う。だから終わり方は相当難しかったはずだし、千砂がいなくなる必要はないんじゃないかとは感じたけど、見終えたあとの余韻の残り方は、冬目さんの雰囲気があるなって。「いなくなる」ことで『僕らの変拍子』の表題作みたいな清々しさはないにしろ、「羊のうた」ではこれがこの作品らしい余韻なのだと思う。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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