シェイムをシェイクでHey Say Yeah!!

2015/04/29

t f B! P L
近所のショッピングモールがリボーンした。

「Renewal」ではなく「Re:born」である。「新装したよ!」ではなく「生まれ変わったよ!」という意味なのだろうか。ぶっちゃけリニューアルと大差ないと思うのだが、けっこう社運がかかってそうな勢いでこのところ着々と準備にとりかかっていたから、かなり気合がはいっていそうだ。

ちょうどゴールデンウィークということもあり、なにやら毎日わちゃわちゃとイベントが催されている。その日程のなかに、ヴァイオリニストの花井悠希さんのフリーコンサートがあった。ショッピングモールのなかに噴水広場というものがあり、そこで祝日なんかにたまにコンサートやパフォーマンスが披露されているのだ。

僕が花井さんを知ったのは、母親がちょっとした知人だからという理由だったので、あまり僕ひとりで観に行っても花井さんからしたらポカーンなのだろうけど、まぁ花井さんの所属しているグループのコンサートとかでサインもらったりするときに軽くあいさつくらいはしてるので、今回は母のピンチヒッターということで観に行った。

でもひとりで行くのはイヤだった。

花井さんに近ごろ興味をしめしている友人なっちをメールで誘ったところ、ゴールデンウィークも早々に「早朝から富士急に発つ」と返信が来た。新人OLの立場で八連休とはいい身分だまったく。

そこで、クラシックはおろかポップスさえもろくに聴かない嗜好を持つ門外漢ソカワを誘った。なぜ彼に白羽の矢が立ったのかというと、たんに年中ヒマそうだったからである。ちなみにソカワに誘う直前に三人の友人に誘いを断られている。なっちやソカワとちがって、みんないそがしいのだ。

ショッピングモールでソカワと合流すると、彼は早々と「腹痛ぇ」と言った。結論から言うとソカワはフリーコンサートの前半をトイレの個室で過ごすことになる。まぁ、もとからあまり興味なさそうだし、それもいいだろうと、ぜんぜんよくはないのに僕は納得した。

後半からソカワが僕のとなりにもどってきた。ソカワはステージの横にある長机を指さして「おい、サイン会やるってよ」と僕に小声で教えてくれた。コンサートなんてふだん観ないだろうに、ちゃんと周囲に気を遣ってくれるところがソカワの人間性の魅力である。ソカワがしめしたのは、ショッピングモール内に入っているレコード店による、花井さんのCDの即売会だった。CDを買うと、サイン会に参加できるらしい。

「じつは、CD持ってきてるんだよね」と僕はソカワに耳打ちした。“ひとことあいさつ”という大義名分をかかえて、ちゃっかりサインをもらおうとしているところが、僕のあつかましい領分と図々しい分際とを象徴している。僕は、3年くらいまえに買った花井悠希さんのソロのCDを持参していた。

ソカワは言った。「そのCD、まえから持ってるヤツじゃないの? あのサイン会は今日あそこで買ったひとにサインするっていう意味だと思うんだけど。持ち込みCDにサインはダメなんじゃない?」

まぁまぁ、細かいことは気にせずに。だって花井さんが所属している1966カルテットというグループのコンサートでも、あらかじめ買ったCDにサインしてもらったことあるし。だいじょうぶだって。僕は悠長にそう考えていた。

フリーコンサートが終わると、僕は素知らぬ顔でサイン会の列にならんだ。ソカワは列から離れて、うしろのほうであくびをしていた。コイツはサインとか欲しくないのだろうか。あ、もともと音楽に興味なかったっけ。…なんて考えながら、CD即売の長机のまえを通り抜ける。すると、物販のおばちゃんが言った。

「すみません、持ち込みCDへのサインはお断りしているのですが…」

「チーン」と、僕のなかでなにかが高速で沈殿した気がした。あ〜、そうですかぁ。そうッスよねぇ。でもこのCD、3年くらいまえにお宅で買ったCDなんですけどぉ。ダメですかぁ。ダメですよねぇ。どう見てもブックレットよれてますもんねぇ。わぁ、なんかみんなCDその場で買ってるぅ。用意してきてるのあきらかに僕だけって雰囲気ぃ。

あたまのなかでさまざまな考えが交錯する。どうしよう。とりあえずソカワのところへもどろう。あの野郎、僕を見ながら「そらみろ」とクスクス笑っていやがる。穴があったら入りたい。でも列を進むのもおかしいし、もどろうにも最後尾までけっこうなひとがならんじゃってる。しかたなく、スタッフサイドの抜け道を使って忸怩たる思いで僕は列を離れた。

「ダメだった」

まるで大学受験に失敗したような面持ちで僕はソカワに報告した。「まぁまぁ、気を落とすなって。またコンサート観に行ったときもらえばいいじゃん。あー腹へった。サブウェイでも行こうぜ」

つくづく優しいヤツだなと僕はソカワについて思う。だけどサブウェイっておまえ、僕が野菜嫌いなの知ってるだろ。嫌味か。

なお、サブウェイのあるフードコートは満席で、マクドナルドもラーメン屋も、どこも飲食店は蛇蝎のごとく長尺の隊列を組んでいた。僕らはあきらめて、ジュースだけ売ってるお店でストロベリーシェイクをふたつ買って、ショッピングモールをあとにした。野郎二人でストロベリーシェイクだなんて、まぁなんてキモチワルイ。もうなにもかもシェキシェキして混ぜこぜにしたい気分である。ブギーな胸騒ぎもチョベリベリ最高なヒッピもハッピもシェイクしたい。

リボーンだかトロンボーンだか知らないが、数回だけ顔を合わせたにすぎない僕みたいな無頼漢のアホ面を、花井さんが視認していないことを、心から祈っている。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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