封筒の開封時におけるミステリアス三角地帯

2015/05/07

t f B! P L
また一日を終えた。意識も疲弊して帰宅する。一通の封筒が郵便受けに入っている。とりあえず差出人は見ずに、たいせつに、たいせつに親指と人さし指のあいだにその便りを挿す。鍵を開け、玄関の電気をつけ、ガサゴソと靴を脱ぐ。部屋にあがり、カバンをおろし、そろそろと上着を脱衣する。テーブルの上にさきほどの封筒を置く。まだ封筒の外観についての詳細は確認していない。ひとつ深呼吸をはさみ、いざ、とテーブルの前に座する。

封筒を開けるのがたまらなく好きだ。

いいんだ、その封筒が、遠くに住む恋人からの愛の便りじゃなくても。海の向こうのペンパルが送ってくれためずらしい便箋じゃなくても。たとえそれが、クレジットカードの請求書だったとしても僕は封筒を開けるというおこないがたまらなく好きなのだ。

「封筒を開ける」この行為には、ギフトラッピングされたプレゼントの包装のリボンをほどくときとおなじくらいのドキドキが感じられてしかるべきなのだ。金曜日の夜にホテルのベッドの上で、恋人の衣服のボタンをひとつひとつ、丁寧にはずしていくときのような、そんなドキドキが感じられてしかるべきなのだ。よしんば中に封入されているものが三万円を超える金額の引き落とし日の予告状だとしても、そこにはドキドキとワクワクが混在する好奇心のかたまりがあるのだ。

封入されている便箋や請求書を誤ってクシャクシャにしないように、留められたシールをゆっくりとはがす。封筒を開けると、フタにあたる部分のその裏地にはきれいな色があしらわれていたり、単語がならべられたメッセージがつづってあったり、水玉やストライプ、または不思議な文様が印刷されていたりする。封筒の裏地には、そんな隠れた三角地帯がときどきある。

不良少年の学ランの裏側に虎やら龍やらの刺繍とともに「夜露死苦」の文字があるように、封筒の外観をイメージのそばから助けてくれるふさわしい模様ががあるときもある。地味な眼鏡をかけた文学少女がスカートの下にちょっと大胆な下着を履いていたときのように、その内側と外側とのギャップ萌えを感じさせる意外なメッセージが印字されていることもある。

封筒を開けるというそんな行為に、僕はいくばくかの興奮を覚えるのだった。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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