それゆけスパゲッティ・モンスター!

2016/04/09

essays

t f B! P L
さっき、家のインターホンが鳴って外に出たら、宗教勧誘だった。
「ストレスの多いこの現代社会で……聖書を読むことで心の浄めを……」
みたいなことをつまらなさそうに言っていた(あんまり聞いていなかった)。

いつも思うのだけど、宗教の勧誘にくる教会のひとって、ものすごく鬱な表情でぜんぜんおもしろそうじゃないことを、やっぱりぜんぜんおもしろくないしゃべりかたで話すから嫌いになれない。なんか愉快。他人事だからきわめて愉快。バッカじゃねえのって思ってる。

とはいえ宗教とか信仰とか聖書とかにはまったくもって微塵の興味もないので、断ることにした。そういえばむかしアンドレ・アガシ(元プロ・テニスプレーヤー)が愛読書に聖書を挙げていた気がする。まあどうだっていい。でもいくらなんでもこっちがキレ気味に「けっこうです!!」って断るのも気が引ける。なにしろ向こうも悪気があってやってるわけじゃない(と思う)。もしかしたら神父さんに言われていたしかたなくやっているかもしれない。

でも控えめにやんわりと断って、「…ん? こいつもしかして興味あるのかもしれないぞ」と思われても困る。そこで僕はこう言うことにした。

「すみません、僕、『空飛ぶスパゲッティ・モンスター教』なんです」

説明しよう。「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」とは、宇宙がヌードルの触手を持つ怪物、Flying Spaghetti Monsterによって創られたとする、実在する宗教である。

2005年、アメリカ・カンザス州では、公教育で進化論とインテリジェント・デザイン説(以下ID説)を同時に教えなければならないと教育委員会が決定した。進化論は人間はサルから進化したというダーウィンの学説(有名ですね)。ID説とは何らかの絶対的存在が人間を創りだしたという学説。その絶対的存在ってのは、キリスト教の神であったり、じつは神ではなかったりといった感じで、あまつさえ科学的仮説であると主張することもあり、はやいはなしが曖昧だった。

そのID説が科学的仮説であるという主張に対し、反旗を翻す人たちがいた。そのうちのひとりが空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の教祖、ボビー・ヘンダーソン氏だ。彼の目的は、曖昧なID説を撤廃するか、明確に定義し直すことで、進化論 vs ID説の「どっちなんだ戦争」に終止符を打つことである。

教祖ボビー・ヘンダーソンは学校でID説、進化論、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教を、すべて平等に教えなければ法的に抗議すると強引に訴えた。なんだかもうやりたい放題だ。こいつがアメリカやヨーロッパのインターネット上では大人気となり、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教信者が爆発的に増加した。

空飛ぶスパゲッティ・モンスター教はID説の真似をしてID説を批判していると言われている。神による創造、といえばキリスト教だけども、まぁなんかいろいろあって(忘れた)、キリスト教が有害であるとした。神が世界をつくったとか嘘やん、というはなし。

ほんでもって空飛ぶスパゲッティ・モンスター教は進化論の曖昧な点までも指摘する。まったくの無であった宇宙からどこからともなく奇跡的に生命が生まれた、なんてナンセンスなはなしだ、と。

空飛ぶスパゲッティ・モンスター教は「人間はスパゲッティから生まれた」とする。おまえのその説もハイセンスとは言えない気もするが、人間の基礎はDNAであり、DNAは肉体を構成する設計図である。DNAは螺旋状である。これは絡まる二本のスパゲッティなのだ。男女から一本ずつ引き継がれたスパゲッティにより人間は誕生する。うん? なんだかそれっぽく聞こえてきたぞ?

つまりDNAからひとは生まれてくるわけで、それが二本のスパゲッティだとのたもうておる。きっとそのスパゲッティは空から飛んできたのだろう。よく子どもが親に「子どもはどこから生まれてくるの?」という超難題を出題してくるが、その答えも「お空を飛んできたんだよ」ということができる。ファンタジックで素敵じゃあないか。

これまで宗教が原因でいくつもの対立が起こり、何人ものひとが血を流し絶えた。すべてはでっちあげた「神」という存在のせいなのだ。イエス・キリストは罪なんて言葉を一度たりとも口にしなかったけど、後世の人間が原罪だのなんだのとか言うから、人々は教会にすがってありもしない罪を浄めようとし、おかげさまで教会はもうけもうけでわっしょっしょいだった。「キリスト教の神の定義こそが世界を狂わす原因である」とニーチェは批判する(ニーチェじゃなかったかもしれない。僕も曖昧である)。だがしかし! ネット上でみんなが共感して発展した神「空飛ぶスパゲッティ・モンスター」は、権力も争いもない、健全な神なのだ。

説明は以上だ。たぶん勧誘のひと、引いたと思う。っていうか怯えたと思う。僕だったら怯える。でもそのかいあってか、お互いの心になんの傷痕もなく、宗教勧誘のひとは去っていった。結果オーライである。

そしてそれ以降、ウチにまったく寄りつかなくなった。まえまでは僕がひとりで家にいるときにかぎって、狙いすましたかのようにきたものだが。


あくまで補足しておくけど、僕は空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の信者でもなんでもないので、あしからず。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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