【感想】Dr.Izzy / UNISON SQUARE GARDEN

2017/11/06

t f B! P L
なんつーことをしてくれたって感じだよ、Dr.Izzyさんよォ。

「ユニゾンを解剖する」と銘打たれたこのアルバム。ただでさえ人間っていうのは皮膚の下を見るだけで「なこんなことになってたのかよ」と絶句するような生きものなわけなんだが、それがメンバー3人ぶんですってよ。ヨッ、名医Izzy

まず「シュガーソングとビターステップ」がバンド史上最大のロングランになった、それがこんなアルバムを彼らにつくらせたいちばんおおきな原因なんだろうな。個人的にはたまたま落ちてきたタイアップオファーのまぐれヒットって感じだけど、そのヒットにあぐらをかかずに、かつそして武道館公演という節目を迎えたからこそ、考えさせられる存在の歌になった。10万枚売れたということは、それだけ流行にのって聴いた層が厚いってこと。問題は、広く10万人に聴いてもらう方法より、10万人のなかにいるコアなファンを満足させること。その英断に振り切ってくれただけ、ユニゾンってほんとにいいバンドだなぁって思うよ。「武道館、じゃあもう一回やろう!」じゃないんだよ。「もう力抜いていいよね?」なんだよ。

もともとこの歌に関してはリリース時からおおいなる魅力があった。基本的にユニゾンのソングライターは一見して解りづらい単語を歌詞として使用することを好む。あまのじゃくな田淵さんらしいね。「超天変地異みたいな狂騒に慣れ、日常を平和と見間違う」なんて、J-POPのヒットの法則にのっとったら38点くらいの理解のしづらさ。それでも、最後に「見失えないものは?」と問いかける。ようするに『おかしな出来事であふれている現代、麻痺した我々はなにがなにかもわからないけど、ジェットコースターに乗りながらでも見失いたくないもの、君にもあるよね?』とリスナーに問いかけているわけだ。僕らが見失いたくないものですか? アンタらだよ田淵コラてめぇ。

こんな歌い出しではじまるキラーチューンをひっさげたUNISON SQUARE GARDEN6枚目オリジナルフルアルバム『Dr.Izzy』。買ってから、聴いてからずいぶん時間が経った。まとまるのに時間がかかった。でも今度のツアーまでにまとめときたかったからちょうどよかった。

かつてロックバンドとは、外野の声を無視して信じる者たちとのみ不乱に、そして愚直に、自分たちを貫徹する存在だった。2017年、あれから時代は、ロックバンドは幸か不幸か良きか悪しきかずいぶんと変わったものになった。インターネットやSNSの普及、身近になった音楽カルチャー、ビートルズの遺産喰いつくし問題、そういったさまざまな有象無象をひっくるめて、UNISON SQUARE GARDENとはいまはむかしのロックバンドの原論を体現しているバンドとなってきた。「信じるものは救われます」論は、いまやバンドよりアイドルの売り文句になったけど、結果的にユニゾンはマーケティングとかプロモーションとかを抜きにして、コンテンポラリーに信じられるロックバンドだ。

たとえばリズム&ブルースなんかは、音と音の隙間にある感情や人情、軽く言えば「行間」を読むタイプの音楽だけど、ユニゾンはバンド原論をつらぬきながらも、そういったトラディショナルでオーセンティックなロックンロールとはおよそ無縁。「息継ぎさえゆるさない歌詞」「目を据えられない展開」「行間の入りこむ隙間のない音楽」が、ながいことUNISON SQUARE GARDENの真髄だったではないですか。そういう「古くからのロックバンド像」と「現代的ポップミュージック像」を矛盾させることなくうたうのが、彼らだったではないですか。

UNISON SQUARE GARDENがこの独尊的なスタイルに落ち着くまで、初期からのファンならわかると思うんだけど「売れる曲をつくれ」「カラオケでうたえる歌を書け」という時期があった。だからこそ、最初に書いた「シュガーソングとビターステップ」のヒットの末に彼らが出した結論はただしいと思う。いまさらこういう歌をうたい続けて、これまで築いてきたファンを裏切る行為こそ、3人がもっともイヤだったはずなんだよね。そして、大事なのは「いっこ売れた曲があって、それがつぎのアルバムに入る」というポイント。

まえにも書いたとおりアニメとの密な関係のあるユニゾンは、けっしてアニメに振り切った音楽をバンドとしてつくらない。にもかかわらず、そのアニメにぴったりハマっている音楽をつくる。これけっこうスゴいことで、アニメにハマっている以上、「そういう音楽なんだな」として聴かれてしまう一長一短なところがある。でもユニゾンは、アニメとロックが現時点で完全に結合させられるものではないにもかかわらず、どちらも納得させる、満足させることのできるアルバムをつくりあげた。ヨッ、名医Izzy

正直、シュガーソングとビターステップが売れた段階で「あ、コイツらそっち行きやがった」って不安は微塵もなかったのがコアなユニゾンファンだと思うんですよね。このアルバム聴いたときも「お、やっぱりだ。コイツらぜんぜん変わる気ねぇな!」って感じだったし。4thCIDER ROAD』では、こんだけポップにしてもユニゾンはユニゾンなんだよと証明した。5thCatcher In The Spy』では、そこでかちえたポップネスをとことん削ぎ落としてギターロックをつくった。とてもよくできた2枚だった。そのあと、ロングヒット作「シュガーソングとビターステップ」が生まれ、またバンドとしての記念日を日本武道館で祝えた。なら、そんなに気がまえずに「いつもの俺らでよくない?」ていうアルバムをつくるのが筋だろう。「ユニゾンを解剖する」っていうコピーも、「『いつもの俺ら』をつくるなら、ここまで世間に認知してもらえたことだし、取扱説明書があったほうがいいよね?」って発想で生まれたんだろうな。CIDER ROADのポップなユニゾンも、Catcher In The Spyのロックなユニゾンも、それらを踏襲したり超越したりするようなアルバムはつくらなくていい。最高傑作を打ち出す時期じゃないんだ。だからもちろん売りかたとしてはプロモーションスタッフ陣はきっとピンとこなかっただろうなって思うけど、そこらへんの判断はさすがだなと思う。ヨッ、名医田淵!

そういう経緯を踏まえて、「女子中高生のあいだで泣けると話題に~」「ライブではタオル振りまわしてファンに呼びかけ~」というのがいまのJ-POP界の売れるための統計結果だとしたら、それと真逆の道路をスタスタと行くのがUNISON SQUARE GARDENだろう。道路って呼ぶのは不適切かもしれない。ひょっとしたら舗装されてない道かもしれない。でもそんな彼らがかっこういい。

個人的に僕は「音楽なんかなくたって生きていける」と思っていて、音楽は「嗜好品、娯楽品、お金がなくちゃ楽しめない大衆の文化」だと思ってるんですね。ただ、僕みたいに音楽に(いい意味で)人生を狂わされてる連中って、きっとマイノリティなんです。大衆にはいないような人種。でもね、僕らだって音楽を軽く扱ってファッションとして着こなしていた過去がかならずあって、そのうちにいつしか「音楽に人生を狂わされたきっかけの歌」がぜったいにあるんです。UNISON SQUARE GARDENは、そういう歌をうたうバンドだと思ってます。しいてほかのバンドと違うとするなら、けっしてやさしく背中を押したりせずに、メソメソクヨクヨしてるひとのお尻を思っきし蹴飛ばすところかな。血も涙もねぇよ。

いい曲にしたければガシガシ打ち込みとかボイスエフェクトとか使えばいいし、時代をつくりたかったらEDMをすればいい。いまどきそれらを積極的に取り入れ、かつ成立させるロックバンドさえいるんだ。売れたきゃそうすればいい。

でもねぜったいに無くならないものもまたロックであって、そんななかでも有耶無耶とまがいものがはびこってるのが現代音楽シーンであって。UNISON SQUARE GARDENは、情報過多な時代に情報過多な歌をうたうけど、彼らなりの生き残りかたがそれなんだと思う。恐竜が死んでも人類が文化をつくった。でも人類って恐竜にわくわくするじゃん。前時代に興味を持つモノ好きは多かれ少なかれいるよ。たとえ少なかれとも、UNISON SQUARE GARDENはそれでいい、それがいいんだと思う。音楽シーンの最後に生き残った恐竜みたいなもんだよ。

さぁ、ツアーに行くまえに考えが整理できてよかった。今月は二週連続リリースが決まっているユニゾン。このままアルバム二枚同時リリースとか二枚組アルバムリリースとかなんて、そんなことまでやってくれそうな予感がして末恐ろしいよまったく。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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