おしゃれ! かわいい! ダサい! 歌詞に紐解くYUKIの世界観

2019/02/10

music

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メランコリニスタ
静かなハイで眠れない
よろしく フランチェックベニスタ
フライパンの上で眠らない
君のくちづけ 決して忘れない
僕の書く下手な詩はたぶん世界を救えない
(メランコリニスタ)

ソロワークとしてのYUKIに多くのひとがふれるきっかけとなったのは、おそらく「JOY」か「ハローグッバイ」、あるいは「ドラマチック」あたりだろうか。これらの楽曲たちに欠かせないのは、ヒットメイカー・蔦屋好位置だろう。もちろん、YUKIのディスコグラフィーを見れば彼のみの力ではないことは明白だが、絢爛な作曲家たちの代表として名前を挙げさせていただく。YUKIの歌声を100%引き出す、一度聴いたら耳から離れない独特のポップなメロディ。いちファンとして、それらをつくりあげた彼ら、および制作スタッフには感謝しかない。

そして、その旋律にのる歌詞である。YUKI自らが紡ぎ出すその言葉たちが、蔦屋らのつくる音符と五線譜のうえで重なることによって、YUKIは120%のポテンシャルを発揮するのだ。

冒頭に引用したのは、13枚目のシングル「メランコリニスタ」の表題曲の歌い出しの部分である。メランコリニスタ、この言葉そのものがすでにYUKIの造語であり、そこに「静かなハイ」「フランチェックべニスタ」「フライパンの上で眠る」などの観念が次々と投下されることで、YUKIの世界観をわずか60秒足らずでたたみかけるように演出している。

YUKIの歌詞について語るにあたり重要なことは、YUKIが「ハナモゲラ」で仮歌を入れていると言うことだ。これはYUKIが2017年に出演したNHK「SONGS」のなかで明かしていることなのだが、作詞の清書をするまえの仮歌をハナモゲラ語、つまり英語風の適当な発音による意味のない言葉でうたうというのだ。そして、その意味のない仮歌から聴こえてくる言葉を拾いながら、歌詞にしていく。YUKIにとって、メロディにいちばん似合う言葉を見つけてあげる方法が、「ハナモゲラ語で仮歌を入れる」ということなのだ。

これだ、と思った。

これなのだ。YUKIの、唯一無二の言語感覚。空間を一瞬で支配するワードセンス。もちろん、すべての歌詞をこの方法で書いているといったわけではないので、ある程度の憶測は含むが、このハナモゲラ語こそが、YUKIの歌詞の魅力を象っているのだ。

僕が流行に乗って『Wave』や『joy』といったアルバムを聴いていた中学生時代、当時は、特に理由もわからないまま、彼女の一種独特の言葉に惹かれていた。少しタガが外れた言葉の接続とでも言おうか。その言葉の組み合わせは、一体どうやって思いつくのだろう?という、驚きの連続なのだ。それらの言葉は、そしてすべてが簡単であり、単純。決して難解不読な言葉を用いているわけではない。YUKIの代表曲「JOY」でうたわれるそのワードも「しゃくしゃく余裕で暮らしたい」「誰かを愛すことなんて時々とても困難だ」といった調子である。

YUKIのワードセンスから得られる印象として、第一に「普通の感性では思いつかない天外突飛な言葉選び」、第二に「簡易な語彙で描くポップな語感」が挙げられる。その理由は前述したとおりだが、第三に「おしゃれで、かわいくて、ダサい」という三大要素があると思っている。もちろん、三つ目の「ダサい」は流行遅れという意味ではない。いい意味で、とても絶妙にダサいのだ。

夕方 金星の色
スタンバってどっちを選んでみよう
(ハローグッバイ)

あまりのかわいさに呆気なくやられてしまうが、字面のダサさはすごい。読んでいて気の抜けるような気分になる。これがYUKI節なのだ。三大要素のなかでスパイスになっているダサさに敢えてふれるとすれば、それは多くの楽曲で頻繁に用いられる「ときに意味を持たないこともあるカタカナ語」「不意に登場する生活に馴染まない熟語」などである。フランチェックべニスタ、千辛万苦、東海道中膝栗毛、これらの言葉をかわいく魅力的にうたえるシンガーがYUKIを除いているだろうか。

これほど生活離れした言葉を選びながらも、不思議なことにYUKIの歌詞には、ストーリーがしっかりと存在している。ただかわいいだけじゃない、ただ意味のない言葉の羅列をうたっているわけじゃない。YUKIの歌詞にはストーリーがあり、聴くものを揺さぶる強烈なパワーがある。

どんなにブルーでも波に乗って
風も光も味方にして
永遠みたいな朝に歌いたいだけ
今日も新しい
(鳴いてる怪獣)

私があなたを好きな理由
100個以上 正座してもっと言えるから
初めてみたいに 背の高いあなたの右腕を掴んだ
想いは強い! 鼓動よ続け!!
(ビスケット)

彼女の独自のワードセンスで選ばれた言葉たちは、きらきらとしたポップなメロディとあいまって、力強い説得力とともに心に刺さる。これがYUKIだ、これがわたしだ! そう言わんばかりのフレーズである。

試してみるって約束だべ? せば何でもできると思ってるっしょ?
(こんにちはニューワールド)

アルバム『まばたき』収録の「こんにちはニューワールド」において、YUKIは故郷を想起させる方言でうたうのだが、この歌はYUKIの生まれ育った函館への思いだけでなく、上京した当時の描写もされる。

大きな声で歌うたび
壁を蹴られたし
雪の降らないクリスマスにも
少しは慣れたし
故郷へ帰った友達は
「今が幸せだ」って 手紙をくれた
(こんにちはニューワールド)

YUKIが上京したてのころを思い浮かべる場面として、きっと小さな部屋で、大好きな歌を大きな声で歌って、壁を蹴られたこともあったんだろうな、と身につまされる。そして、その些細な場面が、デビューしてソロ15年以上経ついまも、彼女のなかで心に残る何気ない、しかし印象的な過去であることを考えるとき、歌を聴く僕らの胸にささって響くのだ。

僕はYUKIが大好きだ。『うれしくって抱きあうよ』のメロウでどっぷり落ち着いた色っぽさも、『FLY』のセクシーなダンスナンバーも、全部々々に感傷と思い出がある。挙げはじめたらキリがなくて、もはや収拾がつかないくらいだ。カメレオンのように楽曲にあわせて、アルバムにあわせて、姿を変えながらも、首尾一貫これまでもこれからもいつまでも、YUKIがYUKIであり続けるから、僕は目が離せなくて、愛おしくてたまらないのだ。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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