我慢できずに噛みしめる愛とリスペクトの珠玉たち、Thank you, ROCK BANDS!

2019/08/04

music

t f B! P L

我慢がね、できないんだ。

大阪での野外ライブ『プログラム15th』、無事に盛況成功だったようでなによりなんだが、行けなかった者としては、どうしても悔しい。

だからというか、せっかくというか、この悔しさを糧にUNISON SQUARE GARDENトリビュートアルバム『Thank you, ROCK BANDS!』の講評をしたいと思う。先月に各自確かめてほしいと書いたんだけど、それでも。だって我慢できないんだから。


1. ガリレオのショーケース / イズミカワソラ


オープニングを飾るのはシンガーソングライター・イズミカワソラによる初期のc/w曲。近年に至るまでライブにおいて欠かさずに演奏されていた。作曲した田淵智也は、「自分たちのキャリアが続いたあかつきには、『え、ライブで毎回やってるあの歌って、1stシングルのカップリングだったの!?』と驚いてほしい」という趣旨の発言を代々に渡りしてきた、とても大事な楽曲である。

UNISON SQUARE GARDENの歌詞には、歪で読解味得の困難なものが多いが、これ自体は作詞を務める田淵自身もメディアで何度も肯定している。「意味のある歌詞を書くつもりはない」。意味があるのか、それともないのかは本質的に問わないとして、少なくとも田淵がこの歌詞のスタイルに落ち着くまでに、予てから敬愛してきたイズミカワソラの影響は計り知れないほど大きいだろう。

その産物なのか、バンドが初めてメジャーでドロップしたCDに収録されるこの歌の歌詞は、イズミカワのスタイルに驚くほどハマっている。

ピアノという武器を手にカバーしたイズミカワは、バンドサウンドを忠実になぞりながらも、アンサンブルのなかでピアノならではのアレンジも施している。間奏部などまさしくそれである。ギターバンドにはできない手法のカバーだろう。

奇しくもユニゾンのライブのオープニングSEもイズミカワソラの楽曲「絵の具」である。それをフィーチャーした歌い出しも、おおいなる敬意を感じる。


2. シューゲイザースピーカー / the pillows 


20年のキャリアを持つ先輩イズミカワの次に繰り出されるのは、30年のキャリアを持つピロウズである。重心を底部に落とし込んでどっしりと腰を据えて鳴らす「シューゲイザースピーカー」は、まさしくピロウズが30年ものあいだ微細たりとも変わることなく奏でつづけてきた音の中核を担うスピーカーから出るシューゲイズサウンドだ。

どんな楽曲においても、個性と尊重を絶妙なバランスで配合するのは、ベテランであっても難しい。ユニゾンの活動内で、アニメのファンとバンドのファンを同時に納得させてきた田淵を可愛がるのは、ユニゾンのファンもピロウズのファンもおおいに頷かせてみせた山中さわお率いるthe pillowsである。

息づかいの節々にまで、熱量と愛情を感じさせる。だから彼らの音楽は、今日も息をするのだろう。アウイエー。


3. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ / 9mm Parabellum Bullet


圧倒的な実力と風格でユニゾンの楽曲を細部まで自身のカラーに染めあげたベテランに続くのは、ユニゾンとおなじ2004年に結成された9mm Parabellum Bullet。

正直、キャリアにおいてユニゾンと正反対のことをやってきたバンドである。デジタルサウンドを駆使して、しかしながらそれに頼らずともバンドサウンドでのパフォーマンスで足場を築いてきた。ライブという主戦場こそユニゾンと同列に戦ってきたが、戦線はまるで違った。

そんな彼らだからこそ、ユニゾンの楽曲を壊すほどのアレンジができたのだ。この「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」は、リアレンジ(再編曲)ではない、リビルド(再構築)である。

完全に両バンド間でのディスコミュニケーションだ。でも、それがいい、それが楽しい。壊す覚悟の愛は、受けとめるに清々しい。

4. フルカラープログラム / a flood of circle


佐々木亮介を筆頭にメンバー間でも仲が良いことで知られるフラッドは「フルカラープログラム」をセレクト。ユニゾンのなかでもガレージ色の強いシンプルな楽曲に適材適所のバンドだろう。

もとがシンプルで、それゆえの魅力が際立っていただけに、派手なアレンジを施すことがなかった。強いて言えばツインギターでアレンジされているが、そのぶん増した厚みを感じさせることがなく、あくまで原曲に寄り添っているところが愛らしい。

日本武道館で斎藤宏介がアカペラでうたったときを想起させる佐々木のアカペラは、ユニゾンへの紛れない愛の証明だろう。完全無欠のロックンロールだ。


5. 蒙昧termination / SKY-HI


SKY-HIはヒップホップアーティストである。その彼のやりかたでユニゾンの楽曲を表現している。

原曲よりもダンサンブルなアレンジ。そして、いつものSKY-HIと同様にラップもしている。きちんとユニゾンに対してリスペクトを持っているリリックで。

無味無臭 無難で優秀が有難がれるこの風習
都の西北がルーツ 15年越しにいま俺がルール
邪道だなんだ言いなさんな
真ん中なんかハナから興味ないんだ
変化球も続けりゃスタンダードってことさ見りゃわかんだろ?

斎藤、田淵とは早稲田高校の後輩にあたるSKY-HI。鈴木も含め、3人の活動を間近で、憧れを持って見てきたSKY-HIだからこそ、このリリックに意味が宿るのだ。


6. MR.アンディ /  BIGMAMA


メロディック・ハードコア・パンク。主にメロディアスなポップパンクを基調としたBIGMAMAのディスコグラフィーだが、そこに入れて並べても遜色ない仕上がりである。

金井政人の声色はもともと斎藤宏介のそれと似ている。綺麗な見通しのなかに、なにか毒を持っている。そのなかで、柿沼広也のセカンドボーカルもBIGMAMAのなかでは重要なポイントでもある。あくまでセカンドボーカルと割り切ったうえで、歌唱パートを半分にしたサビもわかりやすかったのではないのだろうか。

気づいたのはきっと気まぐれで
雨曇りのち憂鬱も晴れ渡り
醒めない夢の戯言だと 誰が笑えど
構わない 怯まない 歓びによく似た
微笑みの記念日です

こんなにも、あたたかく祝ってくれる同期のバンドがいるユニゾンは幸せ者だ。

7. 場違いハミングバード / パスピエ


完全にパスピエである。

大胡田なつきの歌だけでも、一瞬でパスピエ色に染め上げてしまう魔法のスパイスを持っているが、演奏でもパスピエのカラーに染色しきっている。

編曲はパスピエの王道的な編曲。これぞパスピエというパブリックイメージをこの舞台で表現することは潔いし痛快である。なかなか力が入ると足し算の手法で方向が迷うことが多いが、自分たちの編成で真っ向勝負を挑んでくる姿勢は格好いい。

それでいて細かい部分にも手抜かりがない。キーボードがいることも生かし、ユニゾンにはできない方向性の編曲にしている。パスピエの魅力がここぞと詰まっていて、ユニゾンファンとしても聴いていて飽きない。


8. オリオンをなぞる / LiSA


ユニゾンとアニメを引き合わせた初期のスマッシュヒット曲だが、アニメシーンで活躍するLiSAがこの歌をうたうのはもはや必然だろう。

LiSAのソロデビューミニアルバム『Letters to U』で「妄想コントローラー」を田淵が作曲してから、本当にたくさんの歌を、LiSAというシンガーをともに作りあげた盟友同士である。

田淵が、まだだまだだ、と8年越しの対バンに臨んだ歳月に、LiSAも田淵をはじめ、様々なクリエイターと音楽をつくり、我々から見ても「LiSAってすごいな、田淵が見初めただけあるな」と思える現場を重ねてきた。

歌 : LiSA
作詞/作曲 : 田淵智也
編曲 : 堀江晶太

クレジットはもはやLiSAの曲である。それくらい、田淵とLiSAが密な関係をつくり、楽曲を世に出してきた証拠だろう。ユニゾンがLiSAに託した魔法のメロディで祝う15周年は格別である。


9. 桜のあと(all quartets lead to the?) / 東京スカパラダイスオーケストラ


東京スカパラダイスオーケストラ、もちろんのことボーカルはない。

歌がないからこそ、ドラムのアレンジが際立ったように思う。斎藤宏介の声で「キック、リズムを打て!」とうたわれない以上、ブレイク後のバスドラ四つ打ちのビートが鳴らないのも必然である。そのぶん、あくまできめの細かい、繊細なリズムで様々な楽器隊を縁の下で支えている。

「桜のあと」は、ミュージックビデオを観ても、歌詞を読んでもわかるように、ユニゾンならではのパーティソングであり、自分たちのスタイルを確固として示し立てる金字塔となった楽曲でもある。派手なスカのリズムに乗る煌びやかな管楽器やバンドサウンド、果てはキーボードの数々は、まさしくパーティのクライマックスに相応しい。楽園のような人生の、多幸感に包まれている。

10. さよなら第九惑星 / クリープハイプ


尾崎世界観、天才のお出ましである。

クリープハイプの楽曲を聴いてさえ、きっと僕なんかには気づけないほどの様々なトリックと色々な仕掛けが施されているに違いないと思うことがある。この「さよなら第九惑星」も、おそらくだが、一般人なんぞにゃ気づかれないほどの微細な愛と繊細な感情で、レコーディングが行われたはずだ。

自身の歌声に限りなく合わさったメロディライン。さりげなく、なにげなく、しかし堅牢にはめ込まれた「シュガーソングとビターステップ」。この歌がドロップされた当時の斎藤宏介をそこはかとなく想起させる嗄ァれたハイトーンボイス。

個人的には、優勝旗を渡したい。音楽で勝負ごとなんて馬鹿らしいが、それでも、感動して泣いてしまった。

11. シャンデリア・ワルツ / THE BACK HORN


バックホーンのサウンドには、男らしい荒っぽいロックもあるが、甘美な美メロとも呼べる繊細なロックバラードもある。

ユニゾンサイドからは痴がましいいい口だが、その音楽性を端的に表現できているのがこの「シャンデリア・ワルツ」ではなかろうか。

毒を含んだ棘と、抜けるような清涼を併せ持つこの歌は、THE BACK HORNの両面性から魅力を存分に引き出され、完璧に近い愛で完成された。

あまりに美しいピッキングと、がなるようなその歌声に、UNISON SQUARE GARDENのうたってきたことさえ、もはや霞んでしまいそうである。でも大丈夫、彼らの歌はきえない。

悲しいことでもなんでもない、そのたびに僕は大人になる。

12. シュガーソングとビターステップ / 堂島孝平


編曲は落ち着いていてお洒落。熱いロックバンドの楽曲をオシャレなシティポップに変化させている。この楽曲は元々がキャッチーなメロディと軽快なリズムが印象的な楽曲ではある。その部分を前面に出し、原曲よりもポップな楽曲に仕上げている。

それによって堂島孝平の魅力を伝えるだけでなく、ユニゾンのポップスとしての魅力も引き出している。ある種の品行と、ある種の無道を両者もつユニゾンの方正なポップバンドの一面をピックアップするのは、シティポップの第一人者として第一線でうたってきた堂島ならではのポップセンスでしかできなかった所行だろう。

「さわれない歌」「WINDOW開ける」など、ユニゾンのディスコグラフィーのなかからチョイスした楽曲が片鱗とでも盛り込まれているのは嬉しい限りである。これが愛だ、これが慈しみだ。


聴き比べ盤 / UNISON SQUARE GARDEN


『聴き比べ盤』は一発録りのライブ演奏。しかしながら演奏は稠密である。過去のスタジオ録音の作品と遜色がないどころか、さらに研ぎ澄まされて鋭利になっている。 15年間の重みを感じるような貫禄も感じる演奏だが、熱量の勢いだけでなくどこか繊細な優しさも兼ね備えたパフォーマンスだ。

改めてユニゾンの楽曲を本人達の演奏で聴くことでバンドの個性を強く感じる。曲も演奏も歌も個性的で、一癖も、二癖もある。真似しようと思っても真似できない。気軽にカバーしようとはあまり思わない。

トリビュートに参加したロックバンドたちは本気で良いものを作ろうと心血を注いでいる。ユニゾンの楽曲の魅力を自身の音楽性やスタンスに落とし込み、再構築して素晴らしいカバーをしている。ロックバンドたちの個性が詰まっている。カバー曲なのに、ロックバンドたちの魅力が最大限に伝わる。

『トリビュート盤』と『聴き比べ盤』の2枚を聴くことで、UNISON SQUARE GARDENの魅力と参加アーティストの魅力の両者の魅力が最大限に伝わる仕組みになっている。

そして、UNISON SQUARE GARDENの楽曲の素晴らしさに感心するのだ。


ファンでよかった。


一流のアーティストや演奏の上手いバンドがカバーしても、楽曲そのものがいいものでなければ、作品としていい出来栄えにはにはならない。一流のアーティストが形にすればそれなりの作品にはなるとは思う。しかし、名曲にはならない。

トリビュートアルバムでは様々なロックバンドが様々な方法でカバーしている。それなのに、どれもが名曲になっている。いや、名曲になっているのではなく、もともとが名曲なのか…どうなのか。それを改めて考えさせてくれた。

ユニゾンは15年間素晴らしい楽曲を創り続けてきた。それをユニゾン以外のロックバンドたちがカバーすることで、改めて「いい歌ばかりのバンド」であることを証明した。

素敵な15周年だ。ファンとして、改めてそう思う。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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