いまだからふりかえる、CHARA + YUKIの愛の火がきえてなかったこと

2019/11/26

music

t f B! P L
世間は「アナ雪」の二作目で盛り上がっているが、今日イチのニュースはなんといっても「チャラユキ」の再始動である。昼休みになんの気なしにケータイを見ていて、このニュースの見出しが目に入った瞬間、「あんっ」と声が出たほどだ。ご丁寧に語尾にハートマークのオプション付きだ。

1993年にエピック・ソニーで出会ったCHARAとYUKI。98年にはそれぞれがツインドラムをつとめるギャルバンド「Mean Machine」を結成し(本格的な活動は00年から)、99年には原宿系ガールズファッション誌「Zipper」の表紙・グラビア撮影のためロンドンまで帯同した二人が、スペシャルデュオ「CHARA + YUKI」としてマキシSg「愛の火 3つ オレンジ」をリリースしてから、20年の歳月が経った。

一度きりの歌から、この20年間、個々に様々な活動展開を広げ、チャラユキの成人式を迎えることとなった。そして再始動の発表である。祝おう。祝おうじゃないか。おめでとう。そしてもう一度、僕たちに歌を届けてくれてありがとう。


「愛の火 3つ オレンジ」がいかに素晴らしかったか



この「愛の火 3つ オレンジ」は、賛美歌のようなアレンジが施されている。c/wにはロッカアレンジも入っているのだが、当時日本のポップ・ミュージックのトップシーンに立っていた二人が、表題曲をポップスにしなかったことには、深長な意味と、なにより意気込みを感じてしまうのは僕だけではないはずだ。優しく軽やかな、しかし威風を鳴らすオルガンの影響もそこには大きいだろう。

サビに入ると、オルガンのなかに勢いよくビートメイクされたトラックが挿入される。これはかなりオルタナティヴで、「ポップでキュート、なんだけど、真似のできない前衛的サウンド」という二人の音楽性を顕著に体現していて、よくできたトラックだといま聴いても思う。

ひとクセもふたクセもあるCHARAのうたいかたと、ソウルフルでR&B寄りYUKIの相性はかなり高い水準で調和している(YUKIに関して、この歌ではJAMのころのガーリーなうたいかたに意識的に封をしている気がする)。とはいえ、途中からラップ調にうたいあげるYUKIのやんちゃ精神に代表される遊び心は随所にある。

好例は歌詞である。難しい単語を使わず平易な日本語で書かれているが、「問いにあふれ」は“Don't be afraid”、「偽らない」は“It's what a night”、「いつから」は“It's gonna”など、日本語と英語とを聴覚の空耳を利用して巧みに行き来する言葉遊びがふんだんに盛り込まれている。なにしろ、表題の「愛の火 3つ」が「愛の秘密」に聞こえるんだもの。

日本語を英語っぽくうたう巻き舌ふうの歌唱法は今日日いろんなバンドが取り入れているし、LOVE PSYCHEDELICOのKUMIなどは自身の堪能な英語の経験から、英語のように聞こえる日本語詞を嫌味なく自然体でうたうことに長けている。本人がどこまで意識的に取り組んでいるかは定かではないが、少なくともCHARAとYUKIはかなり意図したうえでこのようなリリックを書いたと思われる。

種々雑多に述べたが、この歌の特筆すべきはトラックである。イントロからしばらくエレクトロニカ風のやさしくかわいいオルガンだが、サビから入るビートはグルーヴというにはやや希薄で、それでいて手数の多いミュータント・ドラムンベースに配している。どちらかというとエイフェックス・ツインズが決定打を打ったドリルンベースに近い。ドラムの音色も瓜二つで、ストリングスに手数の多いリズムが複雑多様に絡むビートはリチャード・D・ジェームスやSQP、マイク・パラディナスら面々のスタイルと同種であると言える。

これのすごいところは、「愛の火 3つ オレンジ」がたんなるドリルンベースのパクリやパロディの範疇で語られず、れっきとエンターテインメントに仕上がっているところだ。リチャード・D・ジェームスほどの凝りに凝った悪趣味なほどの変態的ビートではなく、あくまでそれを基調としながら、歌謡育ちの人間にもすんなり耳に馴染むように設計されている。YUKIがラップを担うパートのバックで流れるビートは、ローファイ系ブレイクビーツになっていて、これはYUKIに寄り添っているようにも感じられて心地よい。


また歩き始めるCHARA + YUKIを個人的感傷で考える



2007年ごろだったか。MUSIC ON TVのエムエムという、アーティストがマンスリーでVJをする番組があって、当時土曜日の担当がCHARAだった。好きなアーティストがどんな歌を聴いてきたのかを知ることができるのはシンプルに楽しくて、毎週観ていた。

ある日、リクエストで「愛の火 3つ オレンジ」のビデオが流れた。当時のCHARAは妊娠8カ月目ということで、ほとんど寝っ転がっているだけだったが、その自由さもあわせて好きだった。

ビデオが終わって、カメラに向かったCHARAが「チャラユキ、またどうですか?」と、テレビの向こうにいるかもしれないYUKIにひとこと、メッセージを投げていた。

もちろん、番組をおもしろくするための気を利かせたひとことだったのだろう。しかし、YUKIがテレビを観ていなかったら大変だと思い、僕が代わって「ぜひ、お願いします」と返しておいたことをいまでも憶えている。

現在の二人は、相変わらずのキュートなポップネスと、若々しい美貌で日本のトップシーンをうたい続けている。母親になったいまのCHARAとYUKIなら、きっととてつもなく優しくて、あったかい歌を届けてくれそうな気がする。

そういえば。

YUKIが2002年にリリースしたソロデビューアルバムに収録されている「愛に生きて」。本人が作詞作曲をし、スピッツが演奏に参加したことでも有名だが、歌詞の最後の一行にこんな言葉がある。

愛の火はきえないわ
きえないわ
(愛に生きて / YUKI)

弱音のようにうたいながら、まっすぐに愛することをやめようともせずに、強く強くほんとうに強く、希うCHARAとYUKIの歌が、ほんとうに好きなんだ。

愛の火は消えていなかった。チャラユキ、成人おめでとう。二人の歌手人生のキャリアに、おおいなる礼賛と愛をこめて。

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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