UNISON SQUARE GARDENとわたし

2022/06/20

essays music

t f B! P L



ひょんな話のきっかけで気づいたことなんだが、僕は悲しくて落ち込んでいるときや、悔しくて気持ちの整理がつかないときなんかに、UNISON SQUARE GARDENの音楽を聴くことが多い。

そもそも人間には、悲しいときに悲しい歌を聴くタイプと、悲しいときはとびきり明るい歌を聴くタイプとに、大きく分けられるものだと思う。僕は、どちらかと言えば前者で、ユニゾン以外だとSmashing PumpkinsやNine Inch Nailsなど、海外の鬱々とした音楽に感情を同期させることもある。

UNISON SQUARE GARDENの音楽を知っているかたは、ではなぜ、極上のポップをうたう彼らの音楽を、僕が悲しいときに好んで聴くのか疑問だと思う。今回はその話だ。

ユニゾンは「明るい音楽」なのか


結論から先に述べると、UNISON SQUARE GARDENはただ明るい音楽ではない、というのが僕の考えだ。楽しい気持ちに導いてくれたり、朗らかに励ましてくれたり、優しく背中を押してくれたり、そういうことは一切やらないバンドだ。

じゃあその至極のメロディでなにをしてくれるのか、という話なんだが、僕個人の体験から言うと、クヨクヨメソメソしている僕のお尻を思い切り蹴っ飛ばしてくれることにかけては、右に出るバンドはいない。

まだ誤解語弊がありそうなのでもうしばらく書くが、UNISON SQUARE GARDENのライブについて、ここで触れておきたい。

UNISON SQUARE GARDENのライブには、ルールや常識がない。コール&レスポンスがあたりまえの、空間一体型の公演が圧倒的ないま、オーディエンスをまったく煽らず、手拍子や楽しみかたを本質的に自由としている。

バスドラムを四つ打ちで刻めば皆が手拍子を入れ、マイクを客席に向ければファンがうたうような、どこのライブでも通例としてありそうなライブの規範を、彼らは徹底的に無視している。逆に言えば、よそのバンドのライブからそういう規範や常識を自身のライブに持ち込むことを、是としていない。

だから、ライブにおけるいかなるタイミングでも、手をあげて楽しもうが、手をたたいて楽しもうが、座って観ようが、腕を組んで観ようが、前線で踊ろうが、端っこでドリンクを飲みながら突っ立ってようが、すべてが自由なのだ。

このあたりのスタイルについて田淵智也は以前、「ファミレスみたいなもんだよ。他の客がなに食っててもいいし、迷惑なやつもいるけど、逆に言えば料理がうまければいいし、そんなやつもいるよねで済まされる」といった趣旨の例えをしている。自分で考えてほかの観客に迷惑をかけまいと判断した楽しみかたであるなら、オーディエンスとしての立居振舞が原則として自由とされている。

こういう様式に至るにつき、作詞作曲を主に務める田淵智也の音楽への閉塞感が反映されている。マイク向けられても俺は歌えんし、ここでノるとか手拍子をするとか、そういうのも知らん。ライブに来る連中はみんなが規範を理解しているわけではないし、初めて観に来るひともいれば、ロックバンドそのものを初めて体験しにくるひともいる。

だから、手をあげたり飛び跳ねたりしたら後ろのやつが邪魔くさく感じるかもしれないし、デカい声で歌ったりなんでもかんでも手拍子入れたら隣のひとがうるさく感じるかもしれない。突っ立っていたら「こいつノリ悪いな」と感じるひとがいるかもしれないし、ダイブしたら下のひとが痛い思いをする。背の高いひとはそれだけで後ろのひとが見えないなんていうどうしようもない歯がゆいこともある。

色々な現場の人間が来るのがライブだからそれは仕方ない。けれどその、様々な自由と不自由な対立をひっくるめたうえで、僕の出す結論を肯定してくれるのがUNISON SQUARE GARDENだ。

もちろん、コール&レスポンスに応えるのは気持ちがいい。僕もステージに立っていた人間としてすごくよく解る。でも、その圧倒的にライブ慣れした百戦錬磨の猛者たちのなかに、ほんの一握、片隅で楽しめないひとがいるのであれば、ステージに立つ者は目を背けるべきではない。そういうアトラクションであるべきだ。

UNISON SQUARE GARDENがオーディエンスを微塵も煽らないのは、そういう片隅の不幸をつくらないためであるが、自身もそうやって息苦しさを感じるからこそ、汲み取ってくれるライブの現場をつくっている。

だから、UNISON SQUARE GARDENは優しいバンドではない。ファンのことを最大限に考えて放っておくし、周囲をノリかたを気にしてステージから目を離すやつにはなにも与えない。つまり、逆説的な話だが、ステージから目を離さないでいる以上、UNISON SQUARE GARDENはそれだけのものを返すつもりでいるのだ。

それでもユニゾンは助けてくれる


そうやって徹頭徹尾、ファンにたいして一定の距離感を保つUNISON SQUARE GARDENだが、彼らはただ、自分たちの信じる「格好いいロックバンド像」を、シンプルに、極めてラジカルに、追求しているにすぎない。

そういったバンド活動の最中に、少なくとも自分たちを観にライブに足を運んでくれる物好きな連中を悲しませる行為であったり、サブスクリプションですべてが済まされてしまう時代に店頭でCDを買う物好きな連中をガッカリさせる運営であったり、そんな言動がUNISON SQUARE GARDENの辞書にはないのは明白である。

馴れ合いとか求めてないし、ファンに優しいとかいう柄でもないんで、と言わんばかりの態度だが、UNISON SQUARE GARDENの歌には、きちんと彼らの美学が詰まっている。

誰かが不幸せになるようなビートなら鳴るなよ
(セク×カラ×シソンズール)

いま目の前の君が明日を生きれるくらいには
ありえない不条理はぶっ蹴飛ばしていけ
(桜のあと(all quartets lead to the?)) 

味方なんかにはなれないけれど
ねぇ、挫けていいんだよ
(プログラムcontinued)

これだけしっかり突き放し、こんなに力強く帰るステージを準備してくれているから、悲しいときにUNISON SQUARE GARDENを聴くんだと思う。血も涙もねぇよ。けれど、解ってくれる気がしている。似たような苦しみを、きっと彼らも持っている。

ユニゾンだって生きづらい


先立って述べたように、UNISON SQUARE GARDENはロックバンドとして音楽シーンの最前線で歌いながら、極めて異端なライブのスタイルを貫いている。

それにはきっと、ステージの下からは想像の及びもつかないくらい呼吸がしづらかったことだと思う。


一聴じゃ難解なんてこと盛大に鳴らしてきたんだ
贅沢に思うだろう? 思わないなら別にいいけど
(プログラムcontinued (15th style))

今じゃなきゃわからない答えがある
「わからない」って言うなら
「ざまみろ」って舌を出そう
(春が来てぼくら)


SNSが普及した時代に歌いつづけてきたUNISON SQUARE GARDENだから、四六時毎晩ロクでもない苦言雑言を浴びせられたはずだと思う。現代のロックバンドや表現者は、ひと昔前と比べたら遥かに死に近いリスクを背負いながら日夜作品と向き合っている。大きな潮流に身を任せて泳ぐのは簡単だけど、そこに中指を突き立てて生きていくのはとても難しい。心ない声も飛ぶ。

幸か不幸か、日本の音楽シーンは、空間一体型のライブやコール&レスポンスから、もう戻れないところまで来てしまっている。長い年月をかけてステージ側の人間がやりすぎたのだと思う。そういう時代、もう戻れない時代に入っているからこそ、UNISON SQUARE GARDENの音楽やアティテュード、美学や信念に惹かれているひとが多いのも事実だ。

大きな会場でのライブもなく、特別なこともなにもなく、繰り返す毎日の一部として、ただただ愚直に音楽を続けているロックバンドがいる。生活のルーティンワークのように毎年変わらずシングルをリリースし、アルバムをつくり、ツアーをしてくれる。それが当然であるように僕らの町にやってきて、歌をうたってくれる。


最低でも半数は見放していく僕の手を掴むのか
別に構わないけど 拍子抜けする準備と
いつでも帰れる準備はある?
(お人好しカメレオン)

見放す準備はできているし、僕だっていつか離れてしまうのかもしれない。だけど当分はこのままでいよう。UNISON SQUARE GARDENは、帰る場所にはなってくれないけど、座る椅子を用意していつでも待っていてくれる。

結び


2015年7月24日、アンコールをまえに、田淵智也はめずらしくマイクをとった。

「君の好きなロックバンドは、たくさんのひとに愛される曲や、世の中に受け入れられそうな曲をかいてこなかったし、親とか、友達とかに勧めても、だいたいロクなことにならないと思う。僕が保証します。でも、君の好きなロックバンドは、ぜったいにカッコいい。自信をもっていい。これも僕が保証します」

喝采の沸き起こる日本武道館で、はじめてUNISON SQUARE GARDENに肩をポンと叩かれた感じがした。間違ってないよ、と言ってもらえた気がした。田淵智也はつづけた。

「ついてきてくれなんて思わない。我々はカッコいいと思う音楽を自信もってやるし、それをもし気にいってくれたなら、またこうやって、ステージで、君と会おう」

あの武道館の日から何年も経って、時代は新型コロナの疫災にのまれ、僕も大怪我をしたりして毎晩悔しかったり悲しかったりする。そんなとき、「息継ぎさえゆるさない歌詞」「目を据えられない展開」「行間の入りこむ隙間のない音楽」、そういうトラディショナルでオーセンティックなロックンロールとはおよそ無縁でありながらも、「古くからのロックバンド像」と「現代的ポップミュージック像」を矛盾させることなくうたうUNISON SQUARE GARDENが、やっぱり後ろから思い切り、お尻を蹴っ飛ばしてくれる。

前向きになる活力をくれている。

We like happy birthday!! ありがとうね、ちゃんと届いてるよ。

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自己紹介

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好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。

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